ヒハマタノボリクリカエス 8
私は初めてタカシ達と会った日から、家で過ごしていた。
別に体は悪くはない。
不整脈もそんなに感じはしない。
けれども、一日中寝た。
寝た。
寝た。
寝た。
私のやりたいことって。
寝てばかりいると、どうしてもその答えを考えてしまう自分がいる。
そうなっているのに気づくと、私は思考を停止するために布団を頭までかけて、現実から逃避した。
ずっと、ずっと寝た。
勿論、携帯の電源はオフ。
そんなのありえないと普通の人だったら言うだろうが、不思議といくらでも寝られた。
いつしか学校は長い休みに入っていたし、いくら寝ても問題がない環境が整ってしまったのも原因の一つだと思う。
私は、寝る以外ほぼ何もしなくなった。
これがウツなのかな。
部屋のベッドのなかで、ただただ天井を眺めた。
テレビとコンポのコンセントは抜いてある。
漫画や本も、もうずっと読んではいない。
私はそれら全てに興味を亡くした。
ただ時が過ぎていくのみ。
タカシ達とはあれ以来会っていない。
あの日はとても楽しかった。
あのあと、タカシの作品も実際に見せてもらった。
タカシは親の強い希望で有名大学に進む。
しかし本人は芸術家志望で、近くの芸術大学に行きたがっている。
タカシは金を払ってもらっている以上仕方がない、一人息子だし、親には感謝しているから絵は趣味で続けていくつもりだと笑っていた。
タカシはその年にして将来を決めていた。
そりゃあ悩んださ、とも言ったタカシの顔はすっきりとしていた。
私にもそう思える日がくるのかな。
薬ははたして効いているのだろうか。
ずっと、ずっと寝ている。
ベッドから体が起き上がってくれない。
確かに胸の痛みは消えた。
私にとってそれは奇跡だった。
胸がしんどくない、それだけで、薬を飲む価値は十二分にあるし、それだけで気分も大きく違ってくる。
私はこのままどうなってしまうのかな。
ねえ。
トンネルは暗く、出口は見えない。
ただ、時間だけが過ぎていく。
ただ、毎日は過ぎていく。
家、病院、家、家、家、家、家。
クーラーの効いた部屋で、私はずっと寝ていた。
答えは出るのだろうか。
答えなんてあるのかな。
人はどうして生きているの。
私はどうして生きているの。
私は何のために生きているのかな。
ねえ、誰か教えて。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?