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きな臭い情勢だからこその「饗宴の儀」ハラールメニューからみえてくるもの

前回の記事から恥ずかしい程時間が経ってしまったが、書きかけの原稿に加筆することにした。

「饗宴の儀」のベジタリアンメニュー・ハラールメニューの紹介である。

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まず上の写真が、前回の記事で紹介した令和元年10月22日「即位の儀」が行われたあとの「饗宴の儀」の献立である。この献立には「菜食主義の賓客献立」「ハラールミートの賓客献立」があった。なにが違うのか知りたく、宮内庁に取材を申し込んだ。対応はしてもらえたが、画像は入手できなかったので文字だけでの紹介となるが、まず「ハラールミートの賓客献立」から。

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カモ・牛肉・鶏肉は、ハラールミート(屠殺の際イスラム教の教義に則り処理された肉)のカモ・牛肉・鶏肉を使用しているが、料理名を変えることなく、同一のメニューであった。

この、メニューが"同じ"ということは、私にとっては意外なことであった。

次に「菜食主義の賓客献立」を検証する。こちらは、使用具材だけでなく、魚介料理名そのものが変わっているものもある。

わかりやすいようにオリジナルと違う食材の部分色を色付けしてみた。それが以下の献立画像である。

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スモークサーモン・ホタテ・ヒラメ・ワカサギを使用している酢の物は魚介から野菜へと全内容物の変更が必要で、揚げ物も同様にカニ・はも・鶏が豆腐・ナス・芋へ、茶碗蒸しは卵をさけた煮物になっている。高級食材で変更なく使用されているのは松茸くらいだろうか。菜食主義の人へは、これがもてなしであると頭ではわかっているが、もっと日本の美味しい食材を食べて帰ってほしいと思ってしまった。

改めてオリジナルの「饗宴の儀」献立をみると、鯛・エビ・カニ・アワビ・フカヒレと魚介類が多い。改めて、日本が海の幸に恵まれた島国であることを実感すると同時に、イスラム教徒にとって魚介類はハラーム(食べてはいけないもの)でないため、これらは問題ないのだ。先ほど述べたメニューが"同じ"ということがわかっていただけたであろうか。

ハラールについて調べていると認定に関する細かい指示であったり、日本ではムスリム専用に何かをしなくてはいけないという内容を多くみかける。例えば、豚肉を扱う飲食店が認定を受けるためにはキッチン道具を2種用意するとか、ムスリムのために礼拝スペースを用意するとか、メッカの方角を示す表示があるとさらに親切であるとか。異なる宗教のために、彼らをもてなすために、何かをしなくてならないが前提になっている。もちろん、それも必要なことで、細かい知識を学ぶことを否定はしない。しかし、自分たちとは違うものと意識し過ぎているのではないだろうか。

ゴーン被告のレバノンへの逃亡、ソレイマニ司令官殺害、イランとアメリカの情勢、総理の中東訪問、ニュースから伝わるざわざわした感じが否めない。違うものに対する包容さや理解の幅が急速に狭くなっている気がする。

戦争のない平成を経て、令和になったことを祝う「即位の儀」は世界中から来賓が訪れ、祝福された場であった。その後の晩餐会も素晴らしい場であったと想像する。そこで提供された食事内容が"同じ"であるように、他を受け入れた上で寛大でありたい、さらに私個人的には変化を恐れずに来るものを受け入れてと思う年初めである。






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