マック技報Applications_001 〜ミキサーセトラー酸抽出実験
始めまして。今回のマック技報Applicationsは、ミキサーセトラーの酸抽出実験の結果を報告いたします。バッチ抽出と比較して、連続装置で酸を抽出した時の抽出効率を検討いたしました。装置の基礎データとして、役に立つ情報と思います。
結論として、
1.油処理量においては、酸含有油の水抽出の結果、油1〜10mL/分の流量において、バッチ抽出と同様かそれ以上の良好な抽出効率が得られました。
2.水使用量においては、油:水=1:1が望ましい結果となりました。
3.効率化においては、連続運転での10mL/分の場合、15倍の効率化が図れました。
1. ミキサーセトラー酸抽出実験
1.1. 酸抽出実験
酸含有有機相と水を、ミキサーで混合し、スラグ流チューブで抽出、セトラーで液々分離する。
水のpHを測定し、抽出効果を検証する。
対照実験として、バッチ抽出を行う。
油: シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、和光純薬、和光特級
酸: パラトルエンスルホン酸(PTSA)、和光純薬、和光特級
濃度: 0.3N-PTSA/CPME液
水: 精製水、トラスコ、W-20
1.2. バッチ抽出
分液ロート:100mL
撹拌時間:5分✕3回
上層:酸含有油
下層:水
油:水比率=2:1、1:1、1:2、1:3
1.3. ミキサーセトラーシステム
ポンプ
タクミナ社:Q-100、流量:0.1-100mL/min、最大吐出圧力:0.3MPa
油用:ポンプ1台、水用:ポンプ3台
ミキサーセトラー
全体:幅80mm、高さ80mm、厚さ、34mm:3セット使用
プレート:SUS316、ガラス:ホウ珪酸ガラス
ミキサー部:Y字型ミキサー、深さ0.8mm、幅0.8mm
セトラー部;三角形型セトラー、幅50mm、高さ52mm、厚さ8mm、容積10.4mL
スラグ流チューブ
PFA製、外径1/16in、内径1mm、長さ3m
ニードルバブル
IDEX社、P-445NF、PEEK製
油用ニードルバルブ:1個、水用ニードルバルブ:3個
1.4. pH測定
pHメーター:堀場、LAQUAtwin-pH-33
2. 実験結果
2.1. 酸抽出テスト 油:水=1:1
今回の抽出テストの結果は、油中の酸が水に抽出されほど、水のpHが低くなった。つまり一つ前の油中に酸の残存量が多いことが挙げられる。水2のpHは水1の上層の油中の酸量に、水3のpHは水2の上層の油中の酸量に対応する。
バッチ抽出において、水2はpH=3、水3はpH=6となり、中性付近になった。
2段の抽出で、殆どの油中の酸が除去されることになる。
連続運転での1:1mL/分、3:3mL/分において、水2はpH=6、水3はpH=7となり、殆どの油中の酸が除去された。特に水2はpH=6であり、1段目で油中の酸が殆ど除去された。ミキサーセトラーの1段の運転も可能である。
連続運転での5:5mL/分において、水2はpH=4、水3はpH=7となり、2段目で油中の酸が除去された。
連続運転での10:10mL/分において、水2はpH=3、水3はpH=6となり、2段目で油中の酸が除去された。バッチ運転と同様の抽出結果となった。
抽出する油量が少ないほど、スラグ流の滞留時間が長く、抽出効率が良くなる。
2.2. 酸抽出テスト 油:水=1:2
バッチ抽出において、水2はpH=3、水3はpH=6となり、中性付近になった。2段の抽出で、殆どの油中の酸が除去されることになる。
連続運転での1:2mL/分において、水2はpH=5、水3はpH=7となり、1段目で多くの油中の酸が除去された。
連続運転での3:6mL/分、5:10mL/分においても、バッチ抽出とほぼ同様のpHとなった。
2.3. 酸抽出テスト 油:水=1:3
バッチ抽出において、水2はpH=4、水3はpH=6となり、中性付近になった。2段の抽出で、殆どの油中の酸が除去されることになる。
連続運転においては、1:3mL/分、3:6mL/分においても、バッチ抽出とほぼ同様のpHとなった。
2.4. 酸抽出テスト バッチ抽出
バッチ抽出において、水量が増えるにつれ水1、水2のpHが上昇した。油中の酸が、より多く水に抽出されている。
バッチ抽出において、水比率を増加することにより、抽出効率が上がっている。
2.5. 酸抽出テスト 連続 油1mL/分
連続運転で、油1mL/分の場合、水2はpH=6、水3はpH=7となり、水量を増加しても、ほぼ同様のpHを示した。
1段目で殆どの酸が、水中に抽出されていると考えられ、水の増加による影響が見られないと考えられる。
2.6. 酸抽出テスト 連続 油3mL/分
連続運転で、油3mL/分、1::1の場合、水2はpH=6、水3はpH=7となった。
1:2、1:3の場合、水2はpH=5、水3はpH=7となった。
水量が増えると、スラグ流チューブ内での滞留時間が減少し、抽出効率が下がったものと考えられる。水量を増加しすぎるのも良くないと考えられる。
2.7. 酸抽出テスト 連続 油5mL/分
連続運転で、油5mL/分の場合、水2はpH=4、水3はpH=7となった。
油5mL/分においては、2段の抽出が必要と思われる。
3. 結論
3.1. 油処理量
酸含有油の水抽出の結果、油1〜10mL/分の流量において、バッチ抽出と同様か、それ以上の良好な抽出効率が得られた。
特に油流量1〜3mL/分においては、ミキサーセトラー1段を用いての抽出が可能であった。5〜10mL/分においても、2段で抽出可能な結果となった。
3.2. 水使用量
バッチ抽出において、水量を増やすことが抽出効果を上げる一つの要因であった。連続運転では、水量の増加の効果は大きくなかった。滞留時間に減少による抽出効率のわずかな低下を考えると、油:水=1:1が望ましい結果となった。
3.3. 効率化
バッチ抽出10:10mLの場合、3回浸透攪拌すると3回x5分=15分かかる。
連続運転では、10mL/分の場合15分運転では、150mLの油が処理でき、15倍の効率化が図れる。
最後に
連続抽出が可能なミキサーセトラーを用いて、酸抽出実験の報告を致しました。簡単な装置ですが、色々なデータを取得でき、連続フロー実験の単位操作として役に立つ装置と思います。
今後、マック技報では、Talk、Products、Applicationsにて、フロー関連の
記事をシェアしてきますので、どうぞよろしくお願い致します。