涙鉛筆2【毎週ショートショートnote】
先月我が社が販売に漕ぎ着けた新製品、『ティアーズペンシル』通称"涙鉛筆"の売上が好調とのことだ。
どんなものでも滲ませることができる涙色の彩色ができると新しもの好きの文具女子のあいだで人気らしい。
あまりに多用すると嘘泣き鉛筆になってしまいますよ、と注意書きを入れなくてはならないくらい使われているそうで、発案したのが新入社員だというからたいしたものだと思う。
実はこの鉛筆、工場での製造方法が一風変わっている。これは社外秘なのだが、養鶏場で毎日鶏たちが卵を産み落とすのを参考に、託児所に預けられた社員の赤ん坊たちがわんわん泣き叫ぶときに溢れた涙を素材として採用しているのである。涙の分量が足りないときは大人たちが韓流ドラマを見続けて不足分を補っているらしい。
そうして集められた涙を乾燥させ、固めて、鉛筆の芯状に加工して完成するのがティアーズペンシル。
この鉛筆で滲ませた色を消すのは消しゴムじゃなくて、ハンカチがいいそうである。
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