噛ませ犬ごはん【毎週ショートショートnote】
ぼくの好きな食べ物は噛ませ犬だ。
これ以上の好物はないってくらい、最高に好き。
あいつらの命を食べるときのあの悔しそうな顔だけで白飯五杯はいけるね。
ナイフとフォークで切り分けると、きれいな肉汁が滴るんだ。
噛ませ犬にされたやつらの頭によぎる、あー俺騙されてたんだーとか、俺を出汁に使いやがってーとか、さ、そういう気持ちを思い浮かべるだけで、つい口元がニヤけちゃう。ぼくの悪い癖だ。
とくに目が好きなんだよね。諦め、悔しさ、無力さがきれいにミックスされたこの世の終わりみたいな目が特にね。
自分がメインディッシュだと思ってたらただの前菜でしたーって落差がねー、たまんないの。
だから、噛ませ犬ごはんってほんとサイコー。
……でもね、まさか自分が噛ませ犬ごはんになるとはね。ほんと、思いもしてなかったよ。ぼくも、所詮誰かの引き立て役に過ぎなかったんだ。
で、いまからぼくは食べられることになるってわけ。ナイフとフォークでこの身を切られて……
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