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立方体の思い出【毎週ショートショートnote】

「ねーこれ、わたしのアルバム?」
 わたしは母親のスマホを勝手に操作しながら訊いた。
 母は几帳面な性格で、写真を細かくフォルダにわけている。友達の写真、家族の写真、趣味の写真、等々。その中にわたしの名前を冠するものがあった。
「ええ、そうよ」
 と母が台所からこちらを見ずに答えた。
 やっぱりそう。わたしの生まれたときからの記録。
 わたしは画面をスクロールしながら、一枚一枚自分の過去を遡っていった。物心というものがつく以前の覚えない記憶がそこには封じ込められていた。

 ん……何これ?
 幼子だったわたしの写真のさらに昔、フォルダの一番最後の写真を見てわたしは首をかしげなくてはならなかった。なぜって、そこにはひとつの立方体の画像があったからだ。そして、その立方体にはわたしの名前が書かれた札がついていた。

 わたしはこの箱で届けられたのだろうか。それともこの箱から生まれてきたのか。台所で白菜を切る母にわたしは何も訊けなかった。

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