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チャリンチャリン太郎【毎週ショートショートnote】

 茶林茶 倫太郎(ちゃりんちゃ りんたろう)は思春期を迎えたとき、両親に自分の名前のことについて訊ねた。

 名前というものは生涯自分についてまわるものであり、とくに茶林茶という苗字はとても珍しく日本に4人くらいしかおらず、両親と自分を加えたらあと1人だけ。残りの1人は叔父さんで日本に茶林茶は彼が知ってる4人しかいなかった。だから気になるのは当然であった。

 父はそんな倫太郎に、元々はね、茶林(ちゃばやし)さんの一族だったらしいと説明した。でもね、あるとき、茶林さんの中でもとびきりすごい茶林さんが現れてね。それがわたしたちの祖先に当たる人なんだが、茶林の中の茶林ってことで、それを短く略して茶林茶(ちゃりんちゃ)って名乗るようになったらしいんだ。どうだい。かっこいいと思わないか。茶林茶。

 全国の茶林さんの中でも特別選ばれた存在。そのことは彼を勇気づけ、次の日から胸を張って茶林茶を名乗ることができるようになったそうである。

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