棒アイドル【毎週ショートショートnote】

　引越しするので粗大ゴミを出そうと役所に電話した。

「何を出されますか？」
「シングルのベッドとマットレス、それから棒アイドルですね」
「シングルのベッドにマットレス、それから棒、なんですか？」
「アイドルです」
「長さは？」
「1メートルくらいです」
「けっこうありますね」
「なんてったってアイドルですからね」
「ちなみに棒状の形をしている、ということでいいですね」
「ええ」
「重さは？」
「えーと、どれくらいだろう。片手で運べるくらいです」
「するとそんなに重くないですね」
「そんなに重くはないです」
「わかりました」
「で、どうですか？」
「えーっと、それって傘みたいなものですよね。ですと、1メートル未満の棒状のものは普通ゴミで出してもらってけっこうなんですよ」
「あーそうなんですか」
「なので、ベッドとマットレスを回収させていただきます」
「わかりました」

　ぼくはその日、買い物に行くついでに一階のゴミ置き場に長年愛用した棒アイドルを捨てた。