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株式会社のおと2【毎週ショートショートnote】

○○株式会社が倒産した。

同日午後、会社が所有するとある山荘に医者の一団が極秘裏に訪れる。

彼らの目的はいまや死にゆく○○株式会社の法人格を看取るためだった。

法人格とは株式会社などの組織に法的な人格を与えることだと思っていた。人と同じように扱うことで、諸手続きを行えるようにする便宜的な資格。

だがあまり知られていないが、法人格は人の形をしていることもある。

つまりは、だ。顔があったり手足があったりするってこと。

もちろん、人の形をしていると何かと都合が悪いので(誘拐されたりね)、こうして自前の山荘なんなに隠すことが多いらしい。

だが会社が倒産となると話は変わる。法人格は会社と等価の存在だから、彼もまたその命を全うしなくてはならなくなるのだ。

たとえそれが理不尽きわまりないとしても。

いま寝室のベッドで横たわる老衰した法人に医師が聴診器をあてている。

傍にある心電図の音がピーと鳴る。それがわたしが聞いた株式会社の臨終の音だった。

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