音声燻製【毎週ショートショートnote】
「うぉぉぉぉ!!!」
「燻されるぅぅぅぅ!!!」
音声たちは口々に悲鳴を上げた。
「ドは大丈夫か」
とミが聞くが、ファが横で首を横にふる。
ドは一番低い音だから、真っ先にあの桜チップの煙にやられてしまったのだ。
ラがソの後ろで恐怖に震えている。
とにかく煙がすごいのだ。そういうミの体もプスプス音を立て始めていた。
充満する煙に、容赦ない熱。
こんなのはいままで味わったことがなかった。
「このままじゃ、みんな死んでしまうぞ」
***
エンジニアの男はプラグインの結果に満足いかなかった。
なんだか音が死んでしまったように感じられたからだ。
「けっこう高かったのにな」
男は呟いて、ハイパースモークと名前のついたプラグインを外す。「○○さん、これ使ったら燻されたみたいになってオススメだよとか言ってたけど」
男はその場で軽く伸びをして、姿勢を正す。今夜中に作業をやり終えなくてはならなかった。「さて、もう一回はじめからやり直すか」
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