感想文部【毎週ショートショートnote】

　新しい内閣の発足に伴い新しい省が作られた。

「きみが今日から感想文部省の大臣かね」
「そうみたいですね」
「きみ……そんなことじゃあいかんよ。大臣なんだからね。しゃきっとしなきゃ。それに今回は首相の肝入りというじゃないか。ま、せいぜいがんばりたまえ」

　せいぜいがんばりたまえ……か。そんなこと言いながら内心笑いをこらえるのに必死なのはこっちだって分かってる。俺だって指名されたとき、電話越しに笑いを抑えるのに必死だったんだから。

　なんだよ、感想文部省って。月に一度、内閣に感想文を提出するのと全国感想文コンクールを開催するのが主な仕事。ガキの使いじゃあるまいし。

　それにしたって、だれだよ、内閣改造のお題に【感想文部】ってキーワードを引いたやつは。

「感想文部大臣、会見のお時間です」
「すぐ行く」
　俺は口元に苦笑いを浮かべながら、秘書に応える。まあ、なんにせよ、俺も今日から立派な大臣さまだ。せいぜいたのしくやらせてもらうさ。