これが今の僕です

それはワクチン接種の為だったか、温泉に入る為だったか、そのほかの理由だったかは分からない。長蛇の列に家族で並んでバスタオルを受け取り、少しずつ進む列に身を任せる。坂道に沿ういくつかの列のうち最も左寄りだったから、植え込みのある塀の下に公道が見えた。高さをずいぶんと感じた。まるで城みたいじゃないか、さすが宗教の総本山だと思った気がする。

いつの間にか列は解消していた。クラス旅行に来ていた私は友人3人と行動している。入り口のドアをくぐり抜けると飯高先生がいた。教団のことを少し馬鹿にしたような発言をしていた。自分も物理のエッセンスを教団に寄贈してやろうなどと意味のわからないことを言った。

エレベーターで2階に上がる。少し長くて薄暗い廊下を右折すると教室が見えた。友人3人と並んで座ると気の弱そうな教団の男が授業を始めた。

再び1階から2階に友人達と上がるところだった。前と同じように教団を小馬鹿にしていたら、今度は理不尽な顔をした教団の男に見つかった。その男はエレベーターに乗り込んできた。面倒なことになったと思った。教団は何をしてくるか分からない。気をつけるべきだった。友人3人を2階に降ろすと私をその男はさらに上階へ連れて行った。

大人しくしているとエレベーターを降ろされ、ヨガ教室のような部屋に到着した。部屋はストレッチをしている教団員の他には自分と教団の男の2人きりだった。教団の男は名前を古橋と言った。粘着質な古橋に危険を感じていたので古橋の股間を蹴りあげて部屋を急いで出た。

エレベーターでは追い詰められてしまうような気がしたから階段を使った。階段は不便なことに単純に続いているわけではなく、階によっては少し歩かないといけなかった。薄暗い廊下を歩くたび女の教団員たちが傍で怪訝な顔をする。気まずいから古橋さんに許可をもらっています、みたいな嘘を言いつつ移動した。

元の教室に戻ると連帯責任で怒られたのだろう、席がシャッフルされていた。とりあえず前の席について大きめの声で下ネタを言った。気弱な教師は困惑していたが田中だけは笑っていた。

しばらくして、教室に偉い役職の男が入ってきた。名前に梅という漢字が含まれていたせいか、その男からは梅という印象を受けた。また、彼からは礼儀を感じた。私を呼び出したが、古橋の時とは違って落ち着いてついていった。

2階の廊下の奥へと案内される。和のテイストを感じさせるような木組みのドアや木彫りの竜に漆を塗ったような置物があった。最奥の部屋に通された。ここもまた和風であった。

その部屋はどうやらレストランのようであった。外見とは裏腹に、内装はロッテリアにも似た構造の部屋だった。

窓際の4人席に梅澤は私を誘導した。そこには既に老人が2人バラの椅子に座っていた。ソファ側に座った梅澤と私はその老人に相対する構図となった。2人の老人は80台程度に見えた。彼らは何も言わず終始半笑いで少し薄気味悪い。

ふとすると、テーブルの上には食材が並んだ。アボガドをくり抜いた黄色い種のような中身の部分と、茶色い外側の部分、それにレタスがたくさんあった。パンもあったかもしれない。すぐに梅澤は調理に取り掛かった。調理といってもサンドウィッチのようなものを作るだけだった。私はアボガドが苦手だから食べさせらないといいな、食べさせられるだろうな、嫌だなあなどと考えていた。

梅澤が作ったサンドウィッチを老人2人がまず食べ始めた。次に梅澤が食べ始めた。そして順当に梅澤は私の方に4つ目のサンドウィッチを投げてきた。

食べる間もなかった。痛い。このサンドウィッチは生きている。瞬間的に体の1/8が失われたと理解した。


その女は教団に恨みを持っている。私が捕らえられていることを知っているからだ。精力的に活動をして教団を打倒する為の協力者を増やそうとしていた。

ある時とある老婆がやってきた。老婆はピンク色の豚のような外見をした物を持っていた。

女は老婆にそれが何かと尋ねた。老婆の説明は驚くべきものだった。

その豚のようなものは老婆の息子だった。その息子は遵子といい、過去に教団と関わりを持っていた。教団から逃げる際に彼は脳みそになったというのだ。つまりその豚のような脳みそは、遵子が自らを自らに脳みそに封印した結果ということだった。

老婆は教団に恨みを抱えている点で女と利害が一致していた。脳みそになってしまった息子の無念を晴らすべく、協力をしたいということだった。

また、老婆によると教団は脳みその封印を解いてしまうことができるそうだった。そして封印を解くばかりかその脳みそを喰らってしまうと。遵子はそれを逆手にとって悪質な脳みそになったようであった。

女は遵子の成れの果ての、微かな鼓動と紫に変色しゴボゴボと動く部分を見つめた。

一方、私は教団の情報室にいた。連なる円型のテーブルの上に並ぶパソコンは圧巻だった。その一つと格闘していた私はパズルを解いていた。画面に表示された英文字の順番を入れ替えるパズルだった。急いでクリアして彼女に連絡する必要を感じていた。教団の真の狙いは彼女の脳みそだったのだ。

そしてパズルはついに完成する。答えを私ははっきりと覚えていない。それは答えの中のBrainという一節があまりに印象に残ったからだった。私は教団の真の狙いを知っていることを、みつかってしまったと分かった。

外に逃げる。情報室の外はベランダの廊下だった。そしてそこには教団の警備員が何人も既に待ち構えていた。

まさに絶体絶命のところにスラブ系の教団員3名が現れた。

彼らは青い缶の缶ビールを飲みながら警備員を薙ぎ倒していった。時には苦戦もしたが、総じて分のある戦いだった。ベランダの隙間に缶を並べながら徐々に建物の外へと進んでいった。

ようやく1階までくると、地上には民間人がたくさん応援していた。難を逃れたと思ったが、それも束の間、一階の警察官が行手を阻んだ。先刻まではなかった刑務所が目に入った。まさか、とは思った。しかしその悪い勘は的中した。警察官はその刑務所の錠を全て解除した。死刑囚たちがとうとう解き放たれてしまった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?