見出し画像

17年ぶりに書いた母への手紙

おかあさん

あなたが亡くなってもう17年。
最近、夢に出てこないけれど、どうしていますか?

おとうさんのことばかり書いていると
あなたはきっとヤキモチを焼くだろうなと
手紙を書くことにしました。

晩年は、ガンの再発、入院を繰り返して大変だったけれど、

誰かがお見舞いにきてくれるたび、
「お返し」を送るように言い、

毎夕、見舞いに行くおとうさんに、
病院の売店で弁当を買っては持たせ、

ベッドから起き上がれなくなるその日まで、
病室の洗面台で下着を洗っていたね。

遺品を整理しようと、押入れを開けたら、
自分がいなくなってもいいようにと、
おとうさんの新しい下着が買ってあったね。

几帳面なその気性を煩わしく疎ましく思ったこともあったけれど、
おとうさんに似てズボラな私には、
そんなあなたの真似はできそうもありません。

今日、あなたのお友達が
住所をそちらに移したと連絡がありました。
知っている顔がまた減って、こちらはさびしくなりました。

あなたのかわいがっていた孫たちは
すっかりおじさんになったけれど、元気にしています。

これからは誰にも気兼ねせず
おとうさんの世話を焼けますね。

そうそう。
芝公園の白梅が満開ですよ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?