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『くれなずめ』


ワンカットが長い分、自分が一緒にその場にいる感じがあった
こういう男子のノリ、好きなんだよなぁ
そばで見て笑うのが好き

今現在はワンカットでずーーーっと撮っていて、それがまたリアルで、すごく良かった
「ワンカットだ」って気づいても、いつの間にかまた6人に混じっている


はじめから、吉尾が死んでる体でいって、どういう展開になるのかなと思ったけど、わりと裏切られた、いい方向に。

吉尾が死んだと信じたくなくて、過去から目を背け続けるとか、そういう展開なのかと思ったけどむしろ逆。

彼らは吉尾の死を受け止めていて、それでいて自分たちの目の前にいることに疑いを持っていなくて、だけど何処かに埋められない穴があって、ひとつひとつ大切に思い出を掘り返していく。

終盤、シリアスな流れから一転、コメディに。
彼らは、このコメディを、コントを文化祭でやったんだ。もう一度、彼らは演じたんだ

あくまでも、彼らは「ヘラヘラしようぜ」と思っていて、それは彼らの“いつも通り”だったし、当たり前だった。だからこそ崩すことができなかったのかもしれない

どこにいてもどんな状況でも、吉尾たち6人は繋がっていて、同じ思い出を共有していて、それだけでいい。生きてるとか死んでるとか、関係ない
みゆきの言葉、めちゃくちゃ刺さったなぁ
「生きてるとか死んでるとか関係ないの!吉尾は吉尾なの!」

文化祭の打ち上げで、先輩(城田優)が「いつか、この日のことを思い出すんだろうなぁ」と感慨深く言った時、その時みんなは心の中で冷めた目で城田を見ていただろう

だけど今になって、強く思うんだ。
本当だ、あの日のことを今も思い出して、余興の前にカラオケに行ってみんなで思い出を共有して、クソみたいな先輩が言ってたことはこういうことだったんだなって、強く思ってたんだ

あいつらみたいに目立ってイキってる奴らの言ってることなんて、戯言に過ぎない
と思ってた。
城田優は嫌な先輩だったけど、明石が頭から血を流したとき(くそちょっとした傷)、「頭から血はやばいって!」と言って、絆創膏を用意しようとした。

ちょっとしたエピソードだけど、いたわこういう人ってキャラを登場させていてよかった。

そういえば脇役で、こんな使い方する!?って人が多々。飯豊まりえにはじめ、おでん屋の屋台の滝藤にパパイヤ鈴木、警察官の岩松了。めちゃくちゃいい使い方してたなぁ。

jumpover で話してた、藤原季節の階段のシーン。本番で雨がみぞれに変わって雪になったのは偶然だって言ってたけど、なるほど、たしかにこれが偶然なのは出来ている。すごい
シリアスになるに連れてみぞれに変わり、「俺お菓子もらいに行った人になっちゃいました」って無理に笑う藤原季節、ヨックモックのシガールを落として3秒ルールで拾い、前田敦子が登場したときには雪に変わった駅のホームのシーン。

偶然にしても、あまりにも出来過ぎだ。
雨ではなく雪ってところが。
雪は儚いようで激しい。
吉尾の3回忌? 前田敦子は、やりきれずホームに座っていた。彼女は、雨からみぞれ、雪に変わるのを見届けていたんだ


藤原季節のいいところは、キリッとしてる時とぐしゃぐしゃになるまで泣くところの差が激しいところ。カッコいいけど、ダサいくらいに泣く。
若葉竜也は、『街の上で』とは一変して、テキトーでだけどその場の空気を読む男を完璧に演じていた。違和感がない。まさか、あの青と同一人物だとは。
成田凌の、あの情けない感じも、だけど隠れイケメンな感じも、高良健吾の楽観的なところも、ネジの真面目なところも、ハマケンの家庭思いだけどふざけも忘れないところも、

全部よかった


松居監督の、作品全体を彼らは全体の思い出にするところも良かった。きっと、え?なんでここでチープにふざけるの?と思った1人も多かっただろう。だけど私は分かる!この映画は、始めから最後まで、6人の話で、最後の最後に彼らは思い出をちゃんと胸に刻もうと過去を振り返った。
たとえ周りにはチープだと、大したことないことだと思われても、彼らにとっては大切で、吉尾との思い出の一つで、一瞬一瞬が欠かせない事実になっていた。

それは、第三者からみたら大したことないことでも、当事者からしたら大切なことで、誰しも存在しうること。

『くれなずめ』では、チープな言葉に落とし込めたくはないけど、だけど、大切な人と共有した大切な思い出は、本人が存在してようがしてまいが関係なく、思い出自体はしっかりと存在していて、生きるとか死ぬとか関係なく、その人の存在は一勝残り続けるんだろうな、と思った。


後半にかけて、しょうもないと思う人もいるかもしれない。
だけどこれはあくまでも松居監督の身近な人の話で、誰にも当てはまる話で、
ただのフィクションではないノンフィクションで、
だからこそリアリティーがあるし、こんな風に日々が過ぎていくんだろうなとも思わせる。


私自身に、身近で大切な人が亡くなった経験が乏しいされど、いつかきっとその時はふと、突然訪れる。そうなったときに、しんみりするのか、過去ともに過ごした本人を想起しながら生活費するのか。

私にとって、長い間付き合ってきて大切な存在は史乃だけど、彼女に対してへらへらいつも通りふざける自信はない。
多分、きっと、信じられなくて受け入れられなくて、逃げ続ける。
だけどたしかに、私は史乃との思い出がめちゃくちゃあるし、なんだかんだヘラヘラしちゃうんだろうな〜



でもたしかに、こんな大切な友達が、5人もいた吉尾は、思ってくれた人が5人もいた吉尾は幸せだろうなぁ


ハァ、5月まで待った甲斐があったよ、松居監督ありがとう

だけど、私もどこかで過去を精算して、死んでも生きても変わらないし