Professor制度(TPCiジャッジ)の仕組み
※2023年11月時点のお話です。
Professorになったのは2022年12月。まもなく一周年を迎えようとしているのでいくつか話題を区切りながら記事を公開しようと思います。
(あと今週末にはWCS 2023以後初めてオセアニア地方でRegionalsが開催されるのでちょうどいい節目です。)
数年後に当時のことを聞かれても当時の感情とか覚えていないと思ったので備忘録みたいな記事です。所々感情を誇張している部分がありますが、そうでもしないと私が気合入れられないのでご容赦いただけると幸いです。
私のTPCジャッジ歴とProfessor取得のきっかけ
※株式会社ポケモン=The Pokémon Company = TPC
※The Pokémon Company International = TPCi
と以後本記事では略します。
私がジャッジとして継続的に活動を始めたのは公認ジャッジとイベントオーガナイザーを取得した2015年より2年後となる2018シーズンから。それまでは株式会社ポケモンの社員さんがジャッジを担当されていました。
初めてボランティアの募集があったのは2016年10月に開催されたポケモンカードゲーム20th アニバーサリーフェスタのサイドイベントから。集まったのはなんと自分含めて5人。当時世界大会出場者を毎年輩出するチームに所属していたのもあり、2017シーズンのCLはプレイヤーとして出場していました。プレイヤーズIDが4桁なのはその影響ですね。その後チームを脱退してジャッジに専念しまし、2022年7月から留学(社費・大学院進学)のためジャッジ仲間でもある夫を日本に残し、オーストラリアに渡航しました。
勉強に専念したかったのでポケカ活動は一切しないつもりでしたが、(英語版のカード買い直すのも勿体無いし)2022年8月、2023年のWCSが日本開催と聞いてTPCiのジャッジシステムをスパイしてやろうとProfessorになる決心をしました。
本記事ではProfessor制度の仕組みと自分の日本での経験について触れていきます。
2015年のTPCの公認ジャッジ&イベントオーガナイザー
2015年から公認ジャッジとイベントオーガナイザー制度が始まり、今日まで制度に様々な変更がありました。
今ではオンラインで試験が受けられますが、自分が受けた年(2015年2回目)は会議室にペーパー試験を受けに行っていました(笑)じゃあ面接は?ペーパー試験の結果もわからず、面接もそのまま続けて行っていました(笑)
効率は上がりましたね。まさにかがくのちからってすげー!
初回は仕事の都合がつけられず、2回目は東京開催がなかったので神奈川からはるばる新潟までチームメイト(※中部在住)と行ったのは良き思い出です。
ちなみに当時はイベントオーガナイザーになるには公認ジャッジにまず合格しなければならなかったので(※今とは逆)、ルールエキスパートだけ受けて帰る受験者も中にはいました。
ところでこの仕組みは日本限定のものではなく、香港・インドネシア・台湾・タイ・シンガポール・マレーシア・フィリピンで同じ制度が使われています。
上記のエリアの大会運営はTPCiではなく現在TPCが行なっているからで、我々が所持している同じオーガナイザーとルールエキスパートのピンバッチが配られています。募集は上記エリア一括で行われ、2023年度は日本より少し前(1ヶ月以内)の時期に募集がかかっていました。
参考:Pokémon Trading Card Game Website
Professor (TPCiジャッジ)の仕組み
Professorになるための試験の特徴は以下の通りです。
試験は無料
18歳から応募可能
365日24時間いつでも受けられる(メンテナンス時などを除く)
面接の代わりにBackground Chek (犯罪履歴の確認)がある
※オーストラリアは政府機関が確認していました (Backscreen Checkとも言うらしい)
※Stage2(後述)昇格試験の際にベテランProfessorあるいはTPCiの社員さんとの面接あり。オーガナイザー、TCG、VGCでそれぞれ試験を受けなくてはならない
活動頻度によってランク(レベル)が上がる
※ランクはBasic, Stage 1, Stage 2の順に上がる
※Stage2に行くまでには2〜3年の海外滞在が必要。英語も流暢でなければならない。Regionals(≒CL)でStaff稼働するには必ずしもこれらの資格は必要ない
※現在は希望者多数のため基本的に所持していないと難しい試験は英語・フランス語・ドイツ語・イタリア語・スペイン語でいずれか受験可能
※ただしICやWCSでは運営の都合上英語が必須なので注意。試験不合格時はどの試験を受けるにしても30日経過していないと受験不可。
ただし、どの資格も持っておらず、初回の試験が不合格だった場合は14日後に再受験可能
Background Check (犯罪履歴の確認)
TPCだと資格取得の際に面接を行うと思うのですが、TPCiでは代わりに機関に依頼して犯罪歴を確認します。(以下オーストラリア在住中の私の経験談)
英文を読みながら質問に回答したり画面上にサインしたものを添付しました。
今はもう少し早く承認されると思うのですが、自分が取得した時(2022年7月)はコロナ明けも影響して承認が降りるまで4ヶ月近くかかりました。2020年のコロナ流行後から新規ジャッジの承認を停止した国が多く、TPCiが公式webに承認一時停止国一覧表を出していたくらいでした。(ジャッジ承認された後に私はそのリストに気づきましたが…。)全世界で一時停止が解除されたのは2022年の末〜2023年の頭ぐらいだったと記憶しています。
余談ですが、実は私が最も苦労したのはオーストラリア政府が発行した証明証の提出でした。
(政府が発行した証明証に犯罪歴が紐づけられるからオーストラリア政府が発行した証明証が必要になると予想しています。)要求されたのは、パスポート、運転免許証、保険証、身分証のいずれか。
パスポート
→日本人なので日本発行のもの。無効。運転免許証
→日本で全く運転してこなかったので、ハンドル握って命を預かる責任は負いたくない。なのでオーストラリアで有効なものはつくってない。門前払い。保険証
→留学生なので、留学生用の保険に加入させられる。これも無効。身分証
→オーストラリア在住中の日本人数名によりPhoto IDを作る提案を頂き、有効な証明証となりました。私はオーストラリアの国立大学に通っていて、学生証も2024年まで有効なものを所持していたので、メールに添付してみて交渉しましたが、無効でした。
(カナダ人でオーストラリア留学中の子が学生ビザ提出して承認されたらしいですが、それでもいけたのかな…)
日本だと学生証は体感上公的身分証として扱われることが多いのですが、オーストラリアはそうでもないのが衝撃的でした。犯罪歴を追うための情報源にならないなら仕方ないですが。
【噂話】長年Professorやってた人たちから聞いた話だと、Background Check自体最初からあったわけではなく、昔は地域のベテランProfessorがジャッジ資格を申し込んできた人たちの評判を集めて承認していたらしい。恐らくRegional Professor Cordinator (以下参照)というポジションの人たちが該当すると予想するが、口コミ集めが大変そうだ…。
Professor Rank (ジャッジランク)
Organizer, TCG, VGのジャッジランクでいずれか高い方がProfessor Rankになります。ランクを維持するにも、昇格するにも一定の稼働数が必要になります。
Basic
試験(選択問題)通過後、Background Checkを通過するとBasicランクを取得できる。一度Background Checkを通過すると残りの二つの資格については試験さえ規定の点数を取れれば資格は取れます。Basic→ Stage 1
・6つのイベントをジャッジ/運営すること(システムにジャッジ稼働を登録するのでそこでカウントされます)
・Professorと承認されてから(Background Check通過から)最短9ヶ月後
・試験構成は選択問題と複数の記述式問題に回答(なので英作文力は必要)
・作文があるので採点に時間がかかり、ランクアップまで時間がかかる。(噂によるとある程度まとめてランクアップさせるらしい。運が良ければ数日、運が悪いと数ヶ月待たされる。)
・Stage1に上がるまでに7つ以上のイベントをこなすと余分な稼働ポイントはBasic中に稼働した分とみなされ、繰り越せない。Stage1 → Stage 2
・8つのイベントをジャッジ/運営すること。うち4つはPremier Eventsである必要がある。
※Premier Events に含まれるのは League Challenge (≒トレーナーズリーグ), League Cup (≒シティーリーグ), Prerelease (プレリリース、日本には該当イベントなし),International Championships (IC, ≒CL)など。
※Store League(≒ジムバトル)の月間報告などでもカウントされます。
・英語に長けていること
・試験は小論文などのエッセー方式、面接はベテランProfessor(恐らくRPC・RPCについては少し上にスクロールしていただければ)あるいはTPCiの社員さんと行う。
【噂話】ジャッジ経験が豊富で、英語がネイティブ言語の人でも大学の入学試験より難しいらしい。Stage 2維持
・イベントを12コジャッジ/運営すること。うち8つはPremier Eventsの必要がある。
参考:Play! Pokémon Glossary, Become a Pokémon Professor
Organizer (オーガナイザー)
イベントを企画したり、運営したりする点はTPCと変わらないオーガナイザーですが、TPCと異なる点はOrganizerの稼働ポイント(ランクを上げるために必要)をもらうために開催できるイベントの自由度が下がる点、お店のLeague Leaderになれる点(≒ボランティア関係を結べる点)、イベント開催のためのツール(TCGマイスターみたいなのをイメージしてもらえれば)の使用権限を得られる点です。
イベントの開催告知をし、イベント終了後に開催報告をすることによってイベントに協力したジャッジやスタッフにもポイントが入るので、開催報告はとっても大事です。
TPCiにもイベント検索ページ(Event Locator)があり、オーガナイザーの資格を持った人がこの一覧に自身が運営するイベントを追加することができます。しかし、ここに掲載できるのは基本的に日本で言うジムバトルベースの大会なので、日本の素敵な工夫が施された初心者さん向けの特殊大会は基本的に掲載されません..というかできません。独自で開催する場合はお店や開催者のFacebookページやTwitterなどで宣伝するのが主となります。ただ、最近TPCi公認のティーチングイベント開催キットが対象店舗に届けられたとのことで(Play Labみたいなやつ)、場所によっては(主に北米)ティーチングが掲載されている可能性はあります。
あくまで私の印象ですが、TPCiのOrganizer制度は一般人がボランティア関係をTCGショップと結んでStore League (ジムバトル)を運営し、参加者を報告、一定数集まったらLeague Challenge(トレーナーズリーグ)の開催許可、さらに条件をクリアするとLeague Cup(シティーリーグ)の開催許可が降りる仕組みになっています。お店の営業形態にもよると思うのですが、店員さんが自分で全部切り盛りするところもあれば、オーガナイザーが上記の手続きをお店と相談した上で全部切り盛りをしているパターンなど様々です。恐らく一般人がボランティア関係を結びやすいのは海外のTCGショップは個人店が多いからと思っています。
ちなみに私は2024年シーズンLAICでTOP8に入賞したMatthew Burrisと一緒にブリスベンのTCG店舗のLeague Leader(≒ボランティア関係の締結)をしています。私はあくまで期限付きの滞在になるので、地元の人の都合がいいように企画運営はMattに任せてます。いや、丸投げしてます。Mattはどうやったら地元の需要に応じられるか、League Challenge(≒トレーナーズリーグ)の申し込み受付方法、思い切ったBO1の導入、League Challenge開催時のStore League(≒ジムバトル)の運営方法を考えたりしてくれています。まだ若いのに自主性が凄いし、趣味でマネジメント力つくし凄い世界だなとTPCi圏に足を踏み入れて思いました。
でも話を聞いているとRegionals, ICやWCSでスタッフしている人達はここら辺当たり前のようにやってきてポケカの発展に貢献してきているんですよね。(恥じるべき日本での私の貢献度の低さよ…。)Stage 2になるためのイベント稼働数だけで言うならお店の運営に協力することで自然と回数はこなせるのも事実なのですが、地元からの信用を得られなければ来客数も減ってしまってLeague Challenge (≒トレーナーズリーグ)やLeague Cup(≒シティリーグ)も開催できない。お客さんの取り合いにならないように参加者層にとっての理想の大会開催タイミングを聞き出したり、ご近所の店舗との協力関係も時には必要です。Mattはこの辺りも積極的に音頭を取ったりしてブリスベンのコミュニティの発展に協力していますし、1年と数ヶ月しかブリスベンに滞在していない私にも地元の人たちからの厚い信頼が伝わってきます。
さて、資格を取得したのが、9月22日なのですが、気づいたら11月21日時点で稼働ポイント4つ入ってるんですよね。ポイントが入る条件が明記された資料が見つからないのも海外らしさですが、(私のリサーチ力が低いだけかもしれない)恐らくLeague Leader(お店とボランティア関係の締結)としてLeague Challenge (≒トレーナーズリーグ)3回とPrerelease1回開催したことで4ポイント貯まったんだと思います。タブンネ。(月間大会参加者報告でポイントもらってる可能性もあるんですけど円が埋まるタイミングちゃんと見てなかったので不明です。ごめんなさい。)
参考: Become a Pokémon Professor, Start a League, Host Play! Pokémon Events
TCG Judge (TCGジャッジ)
TCGジャッジはジャッジとして稼働したらポイントが貯まります。 Store League(≒ジムバトル)都度のジャッジでは貯まりませんが、参加者の月間報告で1ポイント溜まったりします。
Premier Events,つまりChallenge League (≒トレーナーズリーグ)や League Cup (≒シティリーグ)、Prereleaseなどでジャッジするとジャッジするごとに円が埋まっていきます。ちなみに上記の図のStage1の内円がPremier Event(最大4枠),外円がそれ以外(8枠)です。Stage2への昇格試験をうける条件が8つ(うち4つPremier Event)イベントをジャッジ/運営する、なので恐らくPremier Events で稼働すれば内円も外円も1つずつ埋まると予想しています。
【噂話】多分RegionalsとICで稼働すれば円が埋まっていくと思います…。
私は埋まらなかったけど…。国(エリア)によるのかも。
VG Judge(VGCジャッジ)
みなさま、バッジの中のアイコンをご確認ください。
なんとDSです。Switchじゃない! (Mattに教えてもらいました。Mattという人物についてはOrganizer章で軽く紹介してます)
稼働実績は0。なぜなら流石にVGCのローカルイベントは運営していないから。(ブリスベンにあるのかという疑問も…メルボルン、シドニーはありそう)
では何故取得したのか?
よくRegionalsやICはCLみたいなものと表現されているのですが、CLはTCG部門しかないのに対してRegionalsやICはVGCとGOがあります。(去年はUniteも途中からICで開催されました。)規模的にはJCSみたいな感じです。
オセアニア(現在はオーストラリア+ニュージーランド)はジャッジがTCGに偏っていたこと、ジャッジの数が慢性的に足りていないことからRegionalsで稼働しているジャッジの大半はOrganizer, TCG, VGの資格は全部持っています。両刀が基本型…と言っても過言ではないです。(※流石にオセアニア限定のお話です)
そんな私も、2023シーズンはパースとシドニーのRegionalsではVGC担当で、OCIC, NAIC, WCSはTCG担当でした。レギュレーション更新やら裁定やら情報追いかけるのは大変だけど、サイドイベントを回す時どっちも担当できるのは人材としてかなり強みになりますし、NAICでは実際に片方不足してTCGとVGCのサイドイベントを同時並行で進行させられるなどの運営協力もできました。
さて、まもなく私の2024シーズン始まりますが…今年もダブルヘッダーになるんでしょうか?
Professor Points
Professorとして何かしら稼働すると毎月ポイントが貯まります。
ポイント上限はProfessorランクによって決定されます。
Basic…10pt
Stage 1…20pt
Stage 2…30pt
参考:Professor Ranks/ Judge Ball
たまったポイントは専用の景品交換所で限定品と交換できます。(残念ながらコロナ流行のタイミングで閉められてしまい、2023年11月現在も閉店中です。)
最近はほとんど見かけなくなりましたが…"黒モンボ"や”銀色のモンボ”と呼ばれ、下に"Professor Program"と印字されたスリーブは当時景品交換所にあったものと言われています。
そのほかにも限定プレマやシャツがあったと言われているので、私がオーストラリア滞在中に是非交換所が復活してほしいです…!
参考:The Pokémon Professor Rewards Program
最後に…試験受験は計画的に
最後になりますが、私が片足突っ込んだ落とし穴についてお話します。
試験に合格しても不合格になっても次の30日間試験は受けられません。
これは各ステージの昇格試験を受ける時も同じです。
つまりストレートで合格したとしても全ての資格を取るのに3ヶ月かかります。
試験の問題については言えないのですが、いくつかのとてつもなく嫌らしい問題に引っかかり、TCG以外は(つまりOrganizerもVGも)一度以上不合格を経験しました。ここ数年、ルールの更新頻度はこの二つの方が上回ってるから仕方ない部分はあるんですけどね。(察して)
私の場合は各資格の取得に集中した結果、TCGのStage1の試験が本来9月中旬に受験できたはずなのに、Organizerの取得が9月中旬にズレ込んだがためにTCGのStage1の昇格試験の受験は10月中旬までずれ込みました。運よく1~2週間で結果が出たので被害は最小限に済みましたが、私にとって貴重な稼働1回分がBasic7回目稼働として処理されてしまいました(涙)
オーストラリア滞在中に円を埋めきってStage2の試験問題を見るところまでは行きたいところ…果たしてどうなるか。
そしてここまで読んでふと思った人もいるかもしれませんが、逆パターンで更新のタイミングを間違えたがために他の資格が失効してしまったパターンもあります。前述していますが、TPCiのジャッジ制度は更新制です。
Basicは6回、Stage 1は8回、Stage 2は12回稼働しないと更新できません。(多分)それも概ね1年以内。
稼働数を更新直後に稼げない、各資格の更新月が近いとなると試験受けるタイミング間違えてどれか失効させてしまった、という話も稀に聞きます。可能なら2〜
4ヶ月くらい各資格の更新月を開けられるのが理想的だと思います。
以上になります!
日本に住んでいる人だけでなく、海外在住中、滞在予定の方からもたまに制度のお問合せをいただくので経験と体験談をもとにコンプラスレスレ(日本基準)で資格制度編を書いてみました。
誰かのお役に立てば幸いです。
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