オリゴ党「ヴンダーカンマーの叡智」…敢えて今、『演劇公演』を慣行したその想いとは。
どうも、倉橋里実です。先日の日曜日、珍しくも休みになったので、このコロナ禍(この言葉もいい加減嫌になってきた)において、敢えて実劇場で演劇の公演を打った劇団と、観たその内容についての感想(?)をつらつら書かせて頂きます。
個人的な話ですが、この「オリゴ党」は過去に私が所属していた劇団です。
なんともう25年もやってるそうです。私も足かけ10年くらい関わらせてもらいました。変な劇団です。いい意味で。
主宰であり、作・演出を担う岩橋貞典氏は、はっきり言って変態です。
毒のある笑いを巧妙に混ぜてくる。今笑った、次のシーンで観客をどん底に突き落とすような展開を多用します。どSですね。
さて、この作品。はて「ヴンダーカンマー」とはなんぞや?と思いましたが、まあ、今の時代ググればすぐに出てきます。
驚異の部屋(きょういのへや)は、15世紀から18世紀にかけてヨーロッパで作られていた、様々な珍品を集めた博物陳列室である。 ドイツ語のWunderkammer(ヴンダーカンマー、ブンダーカマー)の訳語「不思議の部屋」とも呼ばれる。
すみません、wikiからのまるっと引用ですが、まあそうゆうことです。
作中の舞台は、上記「ヴンダーカンマー」・・・博物館です。時代構成はどうやら「今」より30年程のち。「コロナ」とは言わないものの、とある「伝染病の蔓延」から世界は一変し、各個人はマスク着用・ソーシャルディスタンスが徹底されている(各自センサーを持っている。密になりそうな距離に他人が近づくとアラートが鳴る。だが親族や近しい人間だと本人が認識した場合にはそのセンサーを解除できる、という設定)
開演して10分程でこの世界観を説明セリフもなく持ってきて観客に「ああ、、、」と思わす手法からまずは「やられた!」という感じでした。
軸になるのは
・博物館職員(キュレーター)
・来館客
・狼人間
です。
「へ?あ??は?? いきなり狼って??」
となりそうですが、なりません。すんなりそんな荒唐無稽な架空の生物のことも、いつの間にか受け入れられてしまう「環境」になってしまっている。
詳しいストーリーを書き出すとキリがないので、私がすごくこの作品に対して「ほほう!(偉そうに)」と思った点を2点だけ書き添えます。
1)本番中に換気とアルコール消毒をし始める演出
丁度、体感時間1時間ほど経った頃であろうか、ストーリー上、
「伝染病蔓延の危険性あり!」
というセリフと共にとアラートが鳴り響き、役者たちが真っ暗な劇場の窓を開け、換気扇を回し、アルコール消毒をし始めるのです。
ランタイム2時間の内容と聞いていました。
今のガイドラインでは、「1時間ごとに換気を」というのがあるみたいなので、これは、間違いなく「イベントを行う上での感染拡大防止対策ガイドライン」にきちんと則った行為です。
それを
「芝居のストーリー上に絡めて」挟んでくる。巧妙かつ狡猾です。
「へへへ、やらなきゃなんねーなら、話の筋に絡めてやろうじゃねーか。こうすればいいんでがしょ?ぐへぐへ」という岩橋氏のしたり顔が目に浮かびます。してやったりです。
2)LGB、ジェンダーに関わる問題をさらりと
ストーリーが流れていく中で、色恋沙汰のドロドロしたものも重要なバックボーンとして描かれているのですが、その中で、L:レズビアンカップルの想いの交錯がかなり重く描かれています。
そしてそれは、その作中では決して「異常な」「稀有な」関係ではなく、カップルを取り巻く人々も、普通に受け入れています。
狙ったのかどうなのか・・・うーん、岩橋氏なら狙って書いてる、かな。
今の時代、かなりLGB(※作註:LGBTと一纏めに表現されますが私は否定派で、LGB、とT:トランスジェンダーは、スタンスが違うものだと思うので、分けて考えたい派です)の方々に対しての認識も広まってきている中、フィクションの世界でありながら(だからこそ)、それが「当たり前」と認識されている世界を描いて、
「そうなってくれたら」という作家:岩橋氏の願望や希望が盛り込まれていたのではないか」と。まあ、単なる邪推ならすみません。
ともあれ、こんな状況の中、映像配信でなんとか!という劇団の公演も多い中、敢えて、リアル劇場での公演に踏み切ったオリゴ党さんに賛辞を贈りたいです。
公式HPでは「2週間後に誰も陽性反応が出なかったという結果を受けてようやくこの芝居が終わったのだと思える」と書かれてあります。
予防対策は完璧だったと思います。稽古から含めて、さぞや大変な苦労をされて公演に臨んだことでしょう。
そこまでして・・・そして物語の中に、まるでそんな状況を自嘲するかのように仕組まれた設定。その心意気に、拍手を送った私なのでした。
PS.
「狼男」と「狼がくるぞ女(虚言癖)」が出てきますが、あれはコロナ禍での「確固たる自分」と「踊らされる大衆(トイレットペーパー買い占めおじさん)」の対比だったのか、と思えたのは穿ちすぎかな。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?