気ままに映画評【発狂する唇】(注:ネタバレあり)

2000年の2月にミニシアター系でひっそりと公開されたこの「発狂する唇」は、今でも忘れられない位の衝撃を私に与え、日本のインディーズ映画の中ではもうこれ以上の作品は出ないであろうと思うくらいのインパクトのある作品でした。

はっきりいってハチャメチャです。なんでもござれの「ごった煮鍋」のような内容で、ジャンル分けをしようにもとてもできるものではありません。あえて言うなら、

「エログロナンセンスサスペンスホラーSFアクションミュージカルギャグ」映画です。

主人公の里美ちゃんは、溺愛する兄の失踪に心を痛め、探偵事務所に捜索依頼をします。しかしその探偵が最悪最低で、里美ちゃんの家に乗り込んできて居座り、里美ちゃんはじめその姉、はたまた母(!)までもレイプしてやりたい放題。わけの分からない霊媒師も呼んじゃって、この家は呪われている~なんてこと言われているいつに、何故か街にはゾンビが蔓延りだして・・・

ね、ここまででもう「おなか一杯」でしょ? 下手すると、馬鹿な小学生が考えた必殺技の名前のような低レベルのものと感じてしまいます。
しかし、そこは実は(当然)、脚本家:高橋洋氏の「確信犯」的趣向なのです。
主人公であり、ホラー映画でいうところの「スクリーミングアクトレス」である、三輪ひとみさん(かわいい!)演じる「里美」ちゃんを、これでもか!というくらいにいじり倒します。前述のレイプしかり、嘔吐シーンやまさかの「ここで?!」とぶっこまれる「ミュージカル」シーン(しかも超・音痴w)!!

しかし中盤以降、なんの前振りもなく秘密捜査官やゾンビや宇宙人?まで出てきて、坂道を垂直落下する勢いで怒涛のクライマックスまで雪崩れ込みます。

圧巻なのが、(もうここまでくると理由なんてどうでもいい)ゾンビとの戦闘シーン。我らが里美ちゃんが、スコップや鉄パイプを使ってカンフーアクション炸裂!!これがまた上手い!!しかもわざわざ香港からスタッフを呼んでのワイヤーアクション!
力の入れどころが間違ってい過ぎてて、一周して面白すぎるのです!

そんなむちゃくちゃカルトな映画なのに、実は地味に俳優も豪華で、大杉蓮さん、鈴木一真さん、阿部寛さん!!などなど。

大いなる無駄遣い。例えるなら、

「おもちゃの大人買い」

を本気で映画でやっちゃった作品。それが今作なのです。


残念ながらメディア化はされていない模様・・・ 私の記憶にしかない、本当に「隠れた名作」なのです。

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