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転んじゃうよね、人間だもの!


「人は転ぶもの」


七転び八起き。

とかいう話ではなく、リアルに「転倒」の話です。

介護施設や医療施設では、利用者さんや患者さんの転倒や転落には特に注意をして対応しています。

でも、あれですね。

絶対転ばないように!は、不可能です(断言)

人間は歩き始めたその日から、転ぶことが約束されていると言っても過言ではないと私は思っている(笑)生きてる間に、人間は必ず転びます、転びますとも、それはそれは、ぶっ転びます!!

ですが、介護施設では特に利用者さんの「転倒」に関しては、ものすごく神経を使っている所は多いと思います。

それはもちろん、老化や筋力低下によりバランスが悪くなったり身体を自分で支えられないために転倒しやすくなる、それに加えて、骨が弱くなっているため骨折しやすくなっている、それ以外にも基礎疾患があるために足の動きが悪くなっている方もいらっしゃったり。

高齢の方にとって転倒は、下手すればその後の生活に関わる可能性が高い事故につながることは勿論、ありますよね。たった一回の転倒で、その後は寝たきりの人生に………なんてことは珍しくありません。

それを心配するから、私達は日々気をつけて対応しなくてはいけない……と、思っているのですが。

「立ったら迷惑をかけるから」

と、席を立とうとした利用者さんに対して、別の利用者さんが発した言葉です。

「何も言わないで立っちゃ駄目だよ、職員さんに迷惑をかけるんだから」

利用者さんの中には、私達が突然席を立った人に慌てて駆け寄る姿を見て「転んだら迷惑をかけてしまう」と思っている方々もいらっしゃいます。

だから、勝手に席を立ってはいけない。

でも、これってどうなんだろう?と、たまに思う時があります。

転んでしまうことの一番の問題は、怪我をしたり骨折をしてしまうこと。それによって、利用者さんの今後の生活に支障が出ること。

でも、利用者さんからしてみれば一番の問題は自分たちが転べば「職員に負担がかかること」になっていて、つまり「自分たちが歩くことは、職員に対して迷惑になってしまう」と思っている方々も少なからずいらっしゃるのだと思いました。

「歩かなければ、歩けなくなる」

人は、物事をやらないでいれば出来なくなってしまいます。

それは、年齢を重ねれば尚更のこと。書かなければ書けなくなり、読まなければ読めなくなり、歩かなければ歩けなくなるのです。

デイサービスでは、椅子に座っている時間が長くなってしまう…という問題は、割と多いと思います。
それは、一人で歩くには不安定、または危険と思われる利用者さんには職員が付き添わなくてはならないから。でも、皆が自由に歩き回るには、職員の数は足りない。ましてや、認知症等がある方では常に誰かが付き添わなければならないような方も中にはいらっしゃると思います。

そうなると、普段は不安定ながら自宅の中では歩いている人も、デイサービスでは座っている時間が長いという、ある意味の矛盾が生じてしまいまう、なんてこともあるかもしれません。

出来れば、家の中と同じように生活をすることが理想的な形とは思うのです。きっと利用者さんもずっと座っているのは、疲れてしまうと思うので。

「転ぶのが怖いのは……」


ですが、デイサービスの中で転倒が発生すると、それはデイサービスの中での「事故」として取り扱われ、ご家族への連絡やら通院やら責任的な辺りでの様々な問題が発生しますよね。
そうなると、私達の中での転倒の問題は利用者さんの怪我もですが、「転んだのが自分たちの責任」になってしまう。という辺りも、とても大きいと思いました。
転んでしまった原因は………と、後で状況の確認をすれば必ず出てくると思います。
「注意を怠った」とか「見守りが手薄だった」とか。
それから利用者さんやご家族に謝罪をして。そして利用者さんの中には「立ってしまった自分が悪かったんだ」と思う人もいらっしゃるかもしれません。
そして、それに偶然居合わせた職員も、凄く落ち込むと思います。何で見逃したんだろうとか、自分のせいだと思う人もいるかも知れませんね。

何分に、とても嫌な気分になるのは間違いないです。

本当に転倒は怖いですよね。その人が怪我をするのも、その責任で自分が責められる気分になるのも。

だから本当にね、ここにいる間は転ばないでくれよ、と思ってる職員は正直少なくないと思いますよ、うん。

うん?

「転ぶこと」への恐怖

絶対に言ってはいけないと思うんですが、利用者さんが利用開始をするときに、「ご利用中に御本人が御本人の意志で歩いて転倒する可能性がありますのでご了承ください」と付け加えたいと思う時がありませんかね……←

勿論、極力転ばないように気をつけます、手すりを設置したり福祉用具を使用したり躓きそうなものを除いたり。そういう努力はいいとして。

椅子から立ち上がること自体に気を使わなくてはいけないような状況は、実際は奇妙な気がします。
ましてや椅子から立った人に対して「どうしましたか?」とか「トイレですか」とか、最悪「立たないでください」とか。介護の仕事をしていない人たちから見れば、とてつもなく変な声掛けなんですよね。
でも、思わずそういう声掛けになってしまう介護スタッフの気持ちは凄く分かります。ましてや、眼の前で転ばれた経験のある人なら尚更、そうなってしまうものです。

人間は、どんなに気をつけていても、歩いていて転ぶときは転びます。本人が気をつけていようが、周りが気をつけていようがその時はその時です。
でも、転ぶかもと歩かなければ、やがて歩けなくなります。歩かなければ歩かないほど、早くに歩けなくなるんです。

勿論、転ばないようにすることで長く歩き続けることは大事。でも、必要以上に気を使わないでなるべく本人の意思で自由に歩けることも大切かな、と、思いました。

施設側としては、ホントに難しいテーマかも(笑)


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