音楽
目の前がスローモーションになっても、あの音楽だけは頭の中でBPMを変えずに流れ続ける。
あなたは新しい歌。
あなたは新しい歌。
あなたは新しい歌。
冷気が頬を掠めて、もうすぐ心臓が止まるのを予感させるのに、頭の中の音楽は止まない。
扉の向こうにいるのでしょう?
刺された横っ腹から流れ出す血液が、凍った獣の肉塊を温めるように囲んでいく。
温度変化で粘ついた赤。
あなたが最期に私を見つめてくれるなら、私はこの血であなたの顔を汚したい。
扉が開くと、泣きじゃくった顔であなたは私を見つめた。
「まるで君は僕だよ」
「これからどうするの?あなたもこっちに来るの?」
「そうしてもいいかな」
ラジオのボリュームを上げるみたいに、私は頭の中の音楽を最大音にする。
あなたは私の新しい歌。
あなたは私の新しい歌。
あなたは私の新しい歌。
あ、音楽に夢中になって、あなたの顔を汚すのを忘れてた。
「心配しないで」
あなたはそう言うと、全てを知っているかのように私の手を頬に持っていく。
あなたも冷たかった。
「あなたは私だよ」
私たちだけはわかってる。私たちだけの本当のことを。
音楽を邪魔するパトカーのサイレン音。
「もうそろそろ終わりにしようよ」
「そうだね」
でも音楽は止まない。
そうだね。
あなたは私の歌。
あなたは私の歌。
あなたは私の歌。
これは、幸せなお話なんです。
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