小説 夢双勇者 Day2-1
Day2 不完全な転生
現世.夢?
「……ふあぁ。よく寝た…」
正直まだ眠い。けれど、二度寝なんてして寝坊してちゃ、勇者にはなれないよなぁ。そんなことを思っていた俺は体に鞭打って体をベッドの外に追い出した。
「さーて、いっちょ無双してやります…か?」
そこで俺は、周りの風景がもといた世界、現世の自分の部屋だったことに気がついた。
「あれっ?」
俺はバッと身体を起こして、周りをキョロキョロと見渡した。
(あれ…?昨日、勇者になっ…てたよな?)
考えを巡らすうちに俺はひとつの結論にたどり着いた。
"夢"
(まじかよ…。折角の転生が夢オチかよ…)
ガックリと肩をおとした俺は、1階へと向かった。
「おはよー、父さん」
「おっ!燈真ァ、遅いじゃねぇか。夜更かしのしすぎか?」
とっくのとうに父さんは起きてテレビを見ていた。特に変わった様子もない。やっぱり夢だったんだな…
昨日の夜に作っておいた味噌汁と白米を簡単に盛り付けて軽くウインナーを焼いただけの簡素な朝食をかっこみ、父さんには大好物のミートソーストーストを作っておいた。トーストなら自分で食べれるからと好んでいる。
俺は自室に戻って夢のことを考えていた。
(昨日のは本当に夢だったのか?やけにリアルだったし、夢にしては鮮明に覚えてるんだよなぁ。)
黙々と考えを巡らしていると、スマホが震えた。画面を見ると、同級生の斉藤一真(サイトウ カズマ)からの電話だった。
「おはよ。生きてるか?」
「問題なし。そっちは?」
「問題なしだよ。」
俺と一真の会話はこんな会話から始まる。いつからこうなったかは分からないけど…
「今日さ、ゲーセン行くんだけど、お前も来いよ」
「まぁ…暇だからいいよ」
「分かった。10時に駅前のゲーセン集合な。」
「了解。」
「あと、真綾もいるからな。」
「分かったよ。また10時に」
真綾ってのは、同じく同級生の海風真綾(ウミカゼ マアヤ)。俺らと仲がいい女子だ。結構持てるらしいけど、付き合ってるって話は聞いたことがない。
(まぁ、夢のことは忘れるとするか。)
俺は、10時まで適当に時間を潰した。
ゲーセンに行くと、既に2人は入り口前にいた。
「燈真、遅いよー。待ちくたびれたじゃん」
「一応時間通りに来たんだぞ?」
「五分前行動が鉄則だろ?ちゃんとしろよ」
「一真だってさっききたばっかじゃん」
「………」
顔をしかめる一真をよそにゲーセンへと入った俺らは、いつもの定番である、「超戦闘クリティカルシスターズ」の筐体で遊び尽くした。相変わらず一真が強すぎて不貞腐れた真綾に俺がUFOキャッチャーでぬいぐるみを取ってやると、真綾は喜んだ。勿論、ぬいぐるみ代は一真に請求した。
すっかり遊び尽くして家に帰った俺は、勉強(ゲーム)を軽くして、夕食を食べて親父と今日のことを話していた。
「…んでさ、俺がぬいぐるみをとってやったってわけ。」
「何回でだ?」
「聞いて驚くことなかれ。10回!」
「甘いな。俺が中学のときは5回で取れたぞ?」
「プロかよ」
そんな話をしたあと、自室に戻ってネットで動画を見たあと、俺はベッドに潜り込んだ。
俺の意識は、闇へと消え去った。
夢界.また?
周りの騒がしい物音で起きた俺は、目をこすった。
(まだ夜中だろ………!?)
俺の意識は一瞬で覚醒した。周りの景色がおかしい。
(ここって……クリウン!?)
あたふたとする俺の目の前のドアが開いた。ドアの奥には、クーニャがいた。
「あ、燈真さん!おはようございます!」
「クー…ニャ?」
紛れもない。ここは、昨日とおんなじ夢の世界だ。また夢?それともドッキリ?
「クーニャ。ちょっと話がある。」
「…?どうしました?」
「実は、おれ、さっきまで俺がいた世界にいたんだ。昨日、ここで寝たあと、目が覚めたら俺は、自分の部屋にいた。どういうことだ?」
「……?分かりません。意識だけが戻ったのでしょうか?」
「ちなみに、俺は現実で1日過ごした。こっちではどうだ?」
「燈真さんは昨日こちらにこられて、今起きたところです。」
余計に頭がこんがらがってきた。俺が現実にいるとき、こっちでは時間が進んでないってことか?
「今日は燈真さんが自分の能力を使いこなせるよう、私の先生に特訓してもらう日です。そのときに先生に聞いてみましょう。」
「わ、分かった。じゃあ行くか…?」
釈然としないまま俺は、ベッドから腰を上げた。
↝Day2-2へ続く……