意識不明の父親のスマホ宛にかかってきた電話に出たら、相手が30年来の愛人だった話

父親が倒れ、遷延性意識障害となってから早いもので三ヶ月弱が経過した。

見聞きしたことはあるものの、その響きへの拒絶反応が酷く自分では使いたくないと思っていた言葉がある。しかし、人に説明するために仕方なく使う時がきてしまった。「植物状態」という言葉だ。

父親は初期の癌だったが、手術を終え、かなり元気に退院した。入院中は暇で仕方なかったらしく院内を散策したりコンビニでこっそり買い食いをしたりしていたらしい。その話を聞いて、「父親らしいな」とおもわず笑ってしまった。

退院当日は、母親と一緒に電車で自宅に戻った。電車を待つ駅のホームでは何人かの仕事仲間に電話をしていたらしい。「これから大きな商談が何本かあるから忙しくなるぞ」そうやって嬉しそうに話していたそうだ。

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