紙芝居『かやねずみ』

画像1 1)岡崎空襲とは? 1945年7月19日から20日未明、愛知県岡崎市はアメリカ軍のB29、90機が襲来。中心市街地が焼け野原となり279人がなくなり、3万人を超える方々が被災しました。
画像2 2)かや(萱)とかや(蚊帳) 題『かやのなか』カヤネズミをご存知ですか?カヤネズミは日本に生息する日本最小のネズミです。萱や葦の葉っぱで丸い巣を作ります。大きさはソフトボールやリンゴくらいの小さなおうち。それと、皆さんは「蚊帳」をご存知ですか?蚊帳というのは蚊が入れないように部屋の隅から吊り下げる布のことです。
画像3 3)かやねずみの天敵たち かやねずみには苦手なものがいます。例えば鳥のアオサギ、獣イタチ。彼らはカヤネズミが大好物。
画像4 4)萱野でかやねずみたちは穏やかに、仲良く暮らしていました。その日が来るまでは。
画像5 5)「火だ!ガヤ、妹たちを連れて逃げて!」お母ちゃんの声でガヤは驚いて目覚めました。「ネネとミミを連れて逃げて。」「おかあちゃん。お母ちゃんは?」「私は弟たちを連れて逃げるから。はやく!早く。」
画像6 6)「矢作川!みんな飛び込むんだ!」後ろの萱野は火の海になっています。ガヤは水を怖がるネネとミミに叫びました。「兄ちゃんにしがみつくんだ。手を離すな!」川の流れは早く、力尽きてたくさんのかやねずみたちが流されていきました。
画像7 7)やっとのことで矢作川を渡りきったガヤ。しかし、体にしがみついいていははずのミミとネネの姿がありません。どうしちゃたんだろう。「ネネー!ミミー!」お母ちゃんとおとうとたちは?「ぼくの名前もまだもらっていないおとうとたちとお母ちゃんをしりませんか?お母ちゃ〜ん!」
画像8 8)ガヤは西の川縁を家族を探して歩き回りました。「いったい何があったの?」西のかやねずみが聞きました。孫たちを連れたお婆ちゃんネズミが何かを言おうとしましたが、言葉が詰まって喋ることができません。代わりに孫たちが口々に叫びました。「銀色の鳥がきてね「」空から火をばら撒いたんだ!」
画像9 9)そこに空から黒い影がかやねずみたちの身体を覆い、1羽のアオサギが舞い降りました。かやねずみたちは「食べられちゃう」と大騒ぎで逃げ惑います。「待て!私じゃない。」アオサギが低い声ではなしました。「私はお前たちかやねずみがうまくてうまくて仕方ないが、食べる以上にお前たちを殺したりしない!決して」逃げ惑っていたかやねずみたちは「そういえば、その通りだ。」と言って立ち止まりました。「私は見た、人間が人間の家を焼いたのだ。」
画像10 10)「エッサホイホイ、エッサホイホイ」川から七匹のイタチが上がってきました。七匹の背中には六角形の棒が乗っています。「イタチだ、食べられちゃう!」かやねずみたちはねげ窓います。爺さんイタチが「慌てるな。わしらイタチはおまえたちかやねずみが好きで好きで仕方なくて、食べるが、食べるため以上にお前たちを殺さない。決して」その言葉を聞いて「確かにそうだ。」かやねずみたちは立ち止まりました。若者イタチが「俺は見た。この棒で人間は人間を焼いたんだ。この棒が地上に落ちると火が飛び散って、人間が人間を焼いたんだ。」
画像11 11)「この火の棒は弾けずに転がっていたものだ。俺たちはこの棒で人間の家を焼きに行くのだ。敵討ちだ!」「かたきうち」「かたきうち」かやねずみたちも囁き合い、だんだんとその声は大きくなっていきました。「私が空から人間の家を探そう。」アオサギが言いました。「俺たちがユンゲンの家の床下に火の棒を運ぶぜ。」イタチの若者が叫びました。「かやねずみが火をつけなくちゃあな。」と誰かが言いました。(劇中歌・かやねずみの戦いの歌)
画像12 12)「火をつけたものがヒーローだ。なぜならば、火をつけたら自分も焼け死ぬからな」誰が行くんだ?かやねずみたちは互いの顔を見合ったり、急に用事を思い出して家に帰る者たちが続出。誰も、「自分が行く!」とは言い出しません。
画像13 13)「ぼくがやるよ。」そう言ったかやねずみがいました。「お母ちゃんも妹のミミやネネも、まだ名前ももらっていない弟たちもみんな死んでしまった。僕はひとりぼっちなんだ。僕が行くよ。」
画像14 14) 「お前は勇気があるな。名前はなんという?」「かやねずみのガヤ」「そうか、お前の名前はかやねずみの歴史に深く刻まれるだろう。」そう言い残すとアオサギは大きな翼を羽ばたかせ大空に舞い上がりました。アオサギの目の下にはまだ燃えくすぶる岡崎の町の炎と煙が見えました。アオサギは方向を西に取り、矢作川と乙川が合流するあたりから安城の街を目ざし田んぼの中に一軒の家をみつけました。
画像15 15)「ここだ!ここだ!」アオサギが叫びます。「エッサあそこだ!えっさここだ!」と掛け声をかけながら七匹のイタチたちは人間の家の床下に潜り込み、火の棒を立てておき、「ガヤあとはお前に任せたぞ、罪もなく殺された動物たちの仇を討ってくれよ。」と言い残していきました。一人、床下の暗闇に取り残されたガヤの前に床板の節穴から落ちているほのかな光に気づきました。「人間てどんな恐ろしい顔をしているんだろう?」萱野で暮らしてきたガヤは人間の姿を見たことはなかったのです。家を焼いてしまう前に憎い人間の姿を目見てやろう。
画像16 16)ガヤは節穴に顔を突っ込んで中をのぞき込みました。どうしたことでしょう?ガヤの目に涙が溢れ、ガヤの耳には子供の頃、お母ちゃんが歌ってくれた子守唄が流れてきたのでした。(劇中歌・かやねずみの子守歌)
画像17 16)「お母ちゃんと僕と同じじゃないか。」ガヤは節穴から人間の家に這い上がりました。そこには、部屋の四隅から釣られた蚊帳の中には人間のお母ちゃんと人間の赤ちゃんがスヤスヤと眠っていたのです。
画像18 17)ガヤは二人の枕元に近づくと、一本の燃えているろうそくを「ふっ」と吹き消しました。
画像19 18)ネズミのいのちも、イタチのいのちも、アオサギのいのちも、人のいのちも、みんなのいのちも同じだ。いのちを大切に。(おしまい)

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