「ある親族の物語 さかいようこ展」に行ってきました
こんばんは、クマです。
最近暑い日が続きますね。僕は暑すぎて眠れなくなってきたのでついにクーラーを解禁しました。この季節は電気代が結構かかるから嫌だなあ。
さてさて。
今回は6月17日までEUREKAにて行われていた、「ある親族の物語 さかいようこ展」の感想を書いていきたいと思います。
「ある親族の物語 さかいようこ展」
EUREKAは大手門の、郵便局が入った雑居ビルの2階にあるギャラリー。
現代アート系の展示がよく行われています。
今回の個展のテーマは「核」。
核兵器から原子力発電所まで、現代の日本を生きる僕たちの常に近くにある問題です。
作者であるさかいようこさんは、東日本大震災の翌年である12年から、この題材へと取り組んで、毎年作品を発表されています。
ギャラリーの中に入ると、白と黒の世界が広がっていました。
すぐに目に止まったのは、入り口のそばにある、足跡を描いた2点の作品。
1点は、新聞記事で作られたキャンバスに巨大な黒い靴底が描かれたもの。使われている新聞記事はもちろん「核」に関する記事です。
こちらの作品は、絵の具の滲みが偶然人の顔のようにみえる部分があり、見ていてはっとさせられました。
もう1点も同じ足跡が描かれたものですが、こちらは先のものとは違い、黒一色の背景であり、滴り落ちる赤い血が描かれていました。
また、こちらの作品は額装された状態で飾られていました。
この足跡は何を意味するのか、どう解釈すればいいのか。
ネガティブな意味合いで捉えるなら、過去に苦しんだり、今もなお苦しんでいる人々のことなどを顧みずに無かったことにする。文字通り足蹴にするというイメージになるかもしれません。
しかしポジティブに解釈すれば、先へ進むための一歩。文字通り今までの過去を踏まえ、これからどうしていくべきかを考える一歩、足元の現状を確認して乗り越えていくための一歩。そういうふうに捉えてみても面白いのではないかなと思いました。
そのほかにも、核に関する話題の新聞記事を布に印刷し縫いつけた洋服や、まるで閃光によってかき消されていくように、一部が白く消えてしまった、白黒のピクセルで描かれた女性の顔の連作など、印象的な作品が続いていきます。
中でも一番印象に残った作品は、個展のDMにも使われていた、さかいさんの親族を撮影した写真のモザイク画でした。
人の身長ほどもある大きな作品であり、ギャラリー奥の壁一面を使って展示されていました。
このモザイク画を構成しているのはたくさんの人の写真です。写っている方々は共通して、キノコ雲のイラストの描かれた、反核を訴えるメッセージボードを抱えています。こちらの方々は、さかいようこさんのプロジェクトに賛同された一般の人たち。日本だけでなく、核保有国を含む他の国の方の写真も含まれています。
そして作品の下の床に落ちているのは、同じように細かい写真のモザイクが印刷された、たくさんの折り鶴たち。転がっている折り鶴の中には、一部がちぎれているものや、完全にバラバラの破片になってしまったものも混ざっています。
この作品を見た時、僕は強い衝撃を受け、しばらくじっと見つめていました。
多くの人の強い思いが込められた、迫力のある作品でした。
映像作品「ある親族の物語」
今回の展示では、個展と同じタイトルの映像作品も出展されていました。
写真とテロップ、そしてさかいさんご本人のナレーションで主に構成された18分間の作品です。
内容は、今回出展されていた家族写真の作品にまつわる、親族のFとその娘さんの物語。
被爆者二世であるF、その娘さんにある日突然襲いかかった白血病、そして時を同じくして発生した東日本大震災による原発事故など、さかいさんの身の回りで、少なからず「核」に関する出来事が立て続けに起こります。
「では私にできることはなにか。特にありません」
そういった中で、はっきりとしない思いで苦しんでいる方達のために、できることは何か。
さかいさんは自分なりの千羽鶴を作るべく活動を始めます。
映像を通してさかいさんの現在の活動に対する強い思いが伝わってきました。
展示されていた作品をさらに深くまで理解する手助けになるのではないかと思います。
また、映像の演出としては、人物写真の目線のように表示されるテロップが印象的でした。
濃密な18分間でした。
まとめ
というわけで、今回は「ある親族の物語 さかいようこ展」の感想を書いていきました。
作品としての魅力はもちろんのこと、強い想いを感じる展示でした。
ただ、強い思いを感じたからこそ、どこかで間違った解釈をしてしまっていないかが少し不安になっています。
というわけで。
今回も拙い文章にここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。
「クマのアートがたり」では、毎週土曜日に主に福岡県内の展示やアートイベントの感想などを書いていきます。
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ではでは。クマでした。
さてさて、いつの間にやら7月が近づいてまいりました。
これからどうなるのかは全く読めない状況ではありますが、福岡は6月最終週ごろから7月にかけて、面白そうな展示がかなり控えている様子です。
というわけで、次回は展示の感想ではなく、これからはじまる展示について語っていきたいと思います。
お楽しみに。
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