【インタビュー】『結いのおと』のはじまり。

※WEBマガジン『La maison de Sachiko』にて2018年10月に掲載したインタビュー記事を再編したものです。

神社の境内、見世蔵、酒蔵、レトロな空き店舗など、歴史ある街並みが、マルシェ、コンサート、アートがつむぐSpecialな2Days。Event 『結い市~街の色をつくる~』が、2018年10月7日(日)、8日(月・祝)に開催される。
(茨城県結城市・健田須賀神社ほか市内各所にて)

結城市内はもちろん、県外からも知る人ぞ知る人気のイベント『結い市』は、今回で9回目を迎えた。今年のテーマは「色」ということで、より美しく味わい深い、古き良きものから新しい結城らしさまで一気に楽しめるのだろう。そこで、主催者である『結いプロジェクト』の方々に話を伺ってきた。

◼︎SPECIALなマルシェ

――今回の『結い市』の目玉、見どころは?

野口 出店者さんは、毎回同じ方だけど、出店する場所が毎回違うんです。同じ場所の方も勿論いますけど。やっぱり、そういう人たちの変化とか、その場所に対するポテンシャルをどう活かすかっていうのが、『結い市』の良さだと思っています。ただ、“マルシェ”はいま、どこでもあるし、近隣では、出店者リストを見てもほとんど一緒になってきているけど。でも、やっぱり、『結い市』の個性的な部分というのは、結城の様々な場所を活かして、出店者さんが、そのときどきで、なにか違う表情を見せてくれたりとか、場所に合わせた作品や、結城に寄って来たりする作風だったり。お菓子をつくる人だったら、『結い市』ならではのお菓子づくりをしてくれるようなマルシェになっています。

ですので、「今回は、どういう人がどんな会場でどういうふうに変化があるのかな?」というのを、楽しみにしてもらいたいなと。

例えば、前回はAさんっていう出店者が、『奥順』(会場)で出たけど、今回は『結城酒造』で出たら、「ちょっと雰囲気が違った!」とか。いつもテントで出ている、水戸でやっているイベントとかともきっと違うし、そういう『結い市』でしか見られない変化を楽しんでもらえたらいいですね。

◼︎神殿&街なかLIVE

――街とのコラボはどういうところになりますか?

野口 必ず、出店する人は、みんな自分の個性を大事にしつつも、そこの場所に協調してくれるんで、それを見どころとして、全体と、毎回ですけど、やっぱり最後まで楽しんでもらいたいですね。

あと、人気企画と言えば、やっぱり音楽! (フリー)ライブを(健田須賀)神社の神楽殿で観られたり、とくに今回は、JUN INOUEさんにもう一度来てもらって、街なかでライブペインティングをしてもらうんです。

(前回の作品は、コワーキングスペース『yuinowa』でご覧になれます)

前回は神楽殿で、たまたま今年来てくれるjizueさんとやったことがあって。今回はまた別の方とやります。

――今回は、街なかでやるんですか!?

野口 はい。浦町の交差点で。

飯野 ど真ん中で。

野口 歩行者天国っていう、なかなかない環境を使って、結城の真ん中だし。結城の大人たちが観ているなかで、うちら(『結いプロジェクト』)が考えているお題、見せたいことが、パフォーマンスとして、表われることで、ちょっとそういう、尖っている部分も含めて、「あ、こういうちょっと突拍子もないことを街なかでやれる」という、そういった受け皿としても、大きく持っていただきたいなっていうところがありまして。

◼︎水藩かご屋“ほいさっさ”

――ちなみに、個人的にですが、人力で人を運んでくれる乗り物「駕籠(かご)」(「水戸藩かご屋で“ほいさっさ”」)を楽しんでいる子どもたちの光景が、すごく可愛いなと。この企画はどういった経緯で?

野口 これは、たまたま、そのリーダーをやっている、担ぎ手(「駕籠舁(かき)」)の坂本裕二さんという方と、(茨城)県で一緒に仕事をしたことがあったんですよ。それで、今の時代は Facebookで。水戸の千波湖で、昔、そこの水戸藩で「駕籠」屋さんがあったらしいんですよね。それを復活させようとやっているのを見て。

――水戸で活動されている方だったんですね。

野口 イベントを主催していると、「あぁ~、結城に来てほしいな」と思って、声をかけてみたら、「いや、これは水戸藩しばりで、千波湖しばりだから、うちら(「駕籠(かご)」屋)はそこから出ないんだ」っていう話になったんだけど。

「じゃあ、もうなんとか来てもらえないかな」ということで、結城の街なかの歩行者天国のところで、彼らの「駕籠(かご)」屋さんが走っていたら、すごい絵になると、イメージを伝えてみたり、あとは、彼らの活動の幅としても、いろんなところで呼ばれるような話にも、もしかしたら、なるかもしれないし、と。

実際は昔、そこ(水戸)にしかいなかったかも知れないけど、いろんな背景を多くの人に知ってもらう意味でも。「まぁ、ちょっと一回だけでいいから出てくれない?」みたいな感じで出てもらったら、すごい評判が良くて!

――やっぱり、そうですよね!

野口 だから、そこからもう定番になっちゃって。(笑)

――「駕籠(かご)」に乗せてもらうとき、お子さんたちが、衣装まで着させてもらったり、笑顔で楽しんでいる姿は、本当にとっても可愛いらしい。

野口 今年も勿論、来るんですけど。乗るお客さんからはお気持ちだけもらっているんですが、それを入れる“結城”専用の停留所を用意してくれるんです。

――凝っていますね。それもちゃんと移動手段としても乗れるんですね!

野口 そういった、既存のものを超える、ここ(結城)の街ならではのコンセプトに合せてアレンジをしてくれたり。たぶん、それは千波湖にいたときのスタイルと違うと思うんです。そういうところ、『結い市』が企画的に面白いと言ってもらえるんだと思います。地域に密着したいろんなアレンジが加わるという。

◼︎ "結城らしい”色とは?

――ところで、今回の『結い市』のテーマは?

野口 「色」です。「もともと、結城らしい色ってなんなの?」って、話になったときに、(『結いプロジェクト』の)みんなと話合ったら、結城っていう、そういうローカル部分だと、モノクロで、良い意味での暗さがあって、その中にある自然の明かりであったり、そういう部分が、逆に良く見えるというか、そういう環境のなかだからこそ、結城の風景って良く見えるねって。

例えば、路地だったり、こういう(『Coworking & Café yuinowa』)部屋の奥の座敷から、何気なく明かりが差し込んでいる良さだったりとか。

今は(結城駅の)南側もいろいろと華やかで、明るくきらびやかになってきてるけど。でも、結城は結城で、まだこれから染まりやすい、色を決めても入りやすい部分なのかもしれないし、そういうモノクロのカラーもあるのかなと。それがすごく美しいんじゃないかと。

飯野 テーマの決め方は、毎年『結い市』は、何のためにやっているのかって話になると、うちら(『結いプロジェクト』)が思う結城の将来像というか、それを2日間だけ見せる、見本市というか、結城の目立つ部分は、『結い市』のなかに世界観として、「あるよ」というのが、年々あったので。テーマの決め方とか、そのコンセプトというのは、そのときやっていることの先を見掲げたことが多かった。でも9年もやってくると、『結い市』もみんな理解してくれているし。

昨年の色はカラフルにしたので、今年はもう少し、『結い市』の素材というか、結城をそのまま見せるような、ストレートな感じでもいいんじゃないかな?っていうのが、今年のテンションです。

――ストレートっていうのは、結城っぽい色ということ?

飯野 今年のビジュアルもまゆ玉一個、「ドーン!」だし。今だから、それができるようになったのかな。最初の数年でそれを出しても、(インパクトは)弱いけど、やっぱり(これまで色々と)やりきったし。認知度も含めて、『結い市』といえば、っていうのが浸透したから、まゆ玉一個でも通用するというか。自信を持てるような、そういうステージ(段階)に来たのかな。

◼︎街の人と“結いプロ”のチカラ

飯野 『結いプロジェクト』のキャラクターみたいなものも結構うまくいっているのかなと。あんまりうちらって敵をつくらないで来た感じなので。

――ふんわりしてますよね。

飯野 だから、街の人ともうまくやっていくし。

――そこが一番難しいと思うんですが、うまくやられているように見えます。

野口 でもね、そこは良い意味で、たぶん自信があるからだと俺は勝手に思っちゃってるんだけど。

――なるほど、『結いプロジェクト』に自信があるから。

野口 自信があるから、そんなこと、「いや別に、頭下げるよ」みたいな。そっち(相手)に媚びますよね。別にそれって自分たちでもう、何か核となる部分があるから。

――間違いないという。

野口 だから、割りと。どっちにも寄れるってことだよね。

飯野 うん。(何か問題があれば)「ごめんなさい」も直ぐするし。

野口 地元だから戻って来られるから。

飯野 それをやるには、一所懸命お手伝いもするし。

――「喧嘩するつもりはない」と。

飯野 ないないない。

野口 だから、そういう部分が、出来てきたのかもしれない。まぁ、自分で言うのもあれだけど(笑)、そういう自信があるから、そういうふうに出来るのかなって気がします。

◼︎『結い市』らしさ、出店者たちのこだわり

野口 たぶん、出店している人たちも、参加しているっていう意味合いもあって。結構、出店者さん同士でも見ているし。出店の様子とか、「今年はあそこが良かったよね」とか、「どこどこの出店が良かった」とか。出店者も割りとそれを気にしていて、だから、「このイベントは出るとなると、背筋が伸びる」というようなことを言ってもらえるんです。

飯野 お互いが刺激し合っているんですね。

野口 「シュッとします」みたいな。そういうふうに思ってもらえるのは、嬉しいですよね。

――『結い市』がひとつの基準となって、このレベルでいたいなという感じですね。

野口 だから、良い意味で、そういう作家さんが肩慣らしにならない(勝負の)場所になっている部分もあるんです。

飯野 良い緊張状態になってもらえているという。

野口 『結い市』に向かって作ってくれるっていうのは、やっぱり、それだけ、お客さんもそれを分かっているから、割りと『結い市』に合せて買っていて。

その作家さんの作品を買いたいという、自分のものにしたいという気持ちがすごく強い人たちも多いから、良い循環になっていて。ちゃんと良いものを作ったって売れなきゃ意味ないし、お客さんも手に取ってもらわないと意味がないから、それがうまく回っているんです。

◼︎子どもから大人までしめる、ハイセンスなお祭り

――ちなみに、お客さんにとって、『結い市』の良さというのは、どんなところだと思いますか?

飯野 『結い市』はね、ファミリー層がすごい増えて来たっていうのもあるし。若い人たちからおじいちゃんおばあちゃんまで出てくるような感じになってきたけど。

野口 でもそれでも、あんまりコンセプトをブレずに出来ているってことは、たぶんお客さんのほうが寄って来てくれたのかなって気がする。それか(コンセプトが)合って来たのか、別に寄ってきたっていうわけじゃないね。(笑)

飯野 たぶん、空気感を参加した人もわかってくるし。

野口 「あ、こういう祭りなんだな」って。最初だとね、極端な芸術祭って、本当に好きな人は行ってもいいけど、あれって、子どもとかが行ったら、まぁ、よほどかけ離れて、外見的なインスタレーションだったら、面白いかもしれないけど。やっぱり、飽きちゃうと思うんです。

飯野 芸術のほうに寄せすぎない感じは、『結い市』のいいところなのかな。アートと言いながらも、やっぱり、街の日常のなかでやるってことは、割りと重要だと思っているから、そのバランス感覚は、大体みんな持っていると思う。

――絶妙ですよね。素晴らしいと思います。

飯野 街の人も「『結い市』ってこんな感じだよね」っていうのを割りと理解してくれるようになったから。

野口 口では説明できないけど、みんな、おばちゃんとかも、「『結い市』って若い人がやっていてお洒落なんだよ」って、感覚としてわかる、「あぁ、なんかね」って。「じゃあ、どうお洒落なの?」って聞かれても、「わからない」っていうけど。やっぱり、産業祭の『祭りゆうき』とは違うし、でも、その違いって、なんとなく、言葉では言えないんだけれど、地元のおじちゃんとかも、もう体感しているからわかってる。『結い市』も祭りとしても、すごく期待できるものだから、「使ってくれ」とか、何かあったらという部分で、協力してくれる。そんな体制づくりができてきています。

――年配の方にも理解が得られるようなアートなんですね。

飯野 本当にアートって、すごい異素材なのを入れすぎちゃうと、街の人が拒絶反応して、「なんてことをしてくれるんだ!」みたいになっちゃうけど、『結い市』は、そのアート感の加減については、日常の部分があってのアートを入れているから、割りと理解しやすい。適度な状況、世界観になります。

――街の人を大切にしているということですね。

野口 そうですね。あんまり、うちらだけの欲求じゃなくて、街全体の欲求にもちゃんと対応しているんだろうね。こういうふうな祭りだったらいいよ、やってほしいっていうところに対して、自然とうちらも。まぁ、俺もよそ者(古河市出身)だけどもう10年ぐらいやって、その街の考えている欲求だったり、飯野くんは地元の人だから、それは当然、そっち(街)側でもあるし。そういう欲求に、ちゃんと満たせるような、イベントに構成されてきているんじゃないかな。自然と受け入れてもらえているというのはあると思います。

◼︎ ゆうきLOVEなARTISTが魅せる素敵LIVE

――今回のライブに出演されるアーティストさんはどんな方にオファーしたんですか?

野口 共通して言えるのは、みんなすごく結城のことが好きなアーティスト。いつも初見の人はいないので。

――そうなんですね!今回は、これまでに『結い市』『結いのおと』『縁市』に出演して、結城のことを好きになった方ばかりなんですね。

野口 一番多いのはIttoくん、今回で4回目。jizueさんは3回目。annie the clumsyさんは、2回目。MIIDA2さんは、キーボーディストのMichelPunchさんとラッパーのJambo lacquerさんのふたり組のユニットで、兄弟なんですよ。お兄さんのほうが、EVISBEATSとPUNCH&MIGHTYっていう、3人でユニットを組んでいて、この人はもう結城に3回目で。弟さんは初めてなんですけど。

やっぱり、結城や『結い市』に理解があって、来てくれるっていう。もともと弟さんはずっとソロでやっていて、すごく俺も好きだったんですけど、昨年あたりから、ユニットで動き出したってことを知っていたので、ぜひ来てくださいと、大阪の豊中から来るんですけど。jizueさんも京都だからね。annie the clumsyさんは埼玉県の大宮。Itto くんは、最初『結いのおと』に来たときは仙台で、それから東京に住んで、今は長野の軽井沢から来てくれます。

◼︎名だたる光地のなか、結城市が『結い市』で「振興賞」受賞

野口 余談だけど、『結い市』で“観光大賞”をもらったことがあって。日本商工会議所エリアでやっている、平成28年度「第9回全国商工会議所きらり輝き観光振興大賞」に結城商工会議所で出したら、受賞しているのは、本当に全部、名だたる観光地で。開催地は京都だし。それで、大賞は長崎が受賞したんだけど。その準優勝的な「振興賞」を茨城県でも初めて結城が獲って。

飯野 考えたら、それって結構すごいよね。

野口 だって、茨城のどこも、ひたちなかも水戸も獲ってないし。

――そんななか「結城市」が受賞できたということですか?

野口 日本商工会議所って514ヵ所あるんですけど、そのなかでも「結城市」が選ばれて、京都で開催する表彰式に行ってきたんだけど。そのときに、わざわざ大阪で飲んだからね、MIIDA2さんと。

――それはどういうきっかけで?

野口 関西に行って、せっかくだから、そっち方面の、こっち(関東)に来ている人よりは、向こう(関西)のアーティストと飲みたいなと思って。京都のjizueさんのマネージャーさんに連絡したら、見事に「俺、今関西にいない」って。次に大阪のMIIDA2さんの方に連絡したら、「行きましょう!」みたいな感じで。阪神(タイガース監督)の金本(知憲)さんが運営している、焼鳥屋で酒を飲んだのを覚えてる。(笑)。でも、まぁ、そういうふうに(会う)機会をつくりました。

『結い市』のコンテンツとしては、初めて呼びたい人もいますけど、『結いのおと』での役割というのが少しずつできてきて、(『結い市』の)音楽のコンテンツとしては、バーンと打ち出しておこうというよりは、アーティストの(中にある)“結城の良さ”というところから、音楽っていう部分を足し算して、『結い市』らしいライブになればいいなと。結城を盛り上げられればというのがメインだから、そこまでガッツかないです。

――結城を理解してくれている方から生まれるライブということですね。

野口 『結いのおと』はまた違って、「あー、誰を呼んでやろうかなぁ!」みたいなのは当然あるし、やっているけど。『結い市』は、アーティストが純粋に結城と絡んだりするとか、ここ最近だけど、自然にそういうふうに考えるようになった気がする。

◼︎お落なフェスのつくり方

――『結い市』ってお洒落感が特徴的ですが、そういうのは初めから?

野口 やるからには、それは絶対。(お洒落感を)出していこうというのはやった。やっぱり、そこはやらないと、うちらもやっていて楽しいというか、それがないとモチベーションが上がらない。うちらも「見て!」って感じのイベントにならないと、消化不良に(なっちゃう)。

飯野 それと、出店者を気持ち良く乗せるのにも、やっぱり(必要)。(フライヤーなどの)こういうデザイン的なところとか、イメージの共通したものをきちっと提示できないと、イベントをオーガナイズする側としても、「ここに向かって、みなさんやってください」って、乗せられるデザインがないと(できない)。

――やっぱり、イメージやデザインにはすごくこだわったんですね。

飯野 ほんとすごい大事。アートディレクター/グラフィックデザイナーの小池(隆夫)くんのデザインが本当に効いているけど、最初から小池くんにこういう形で関わってもらったっていうのは大きかったと思う。それは、出店者もそうだし、運営するうちらも、このデザインでみんなひとつのイメージを共有していけるから。

あとは、そういうデザイン的なところじゃなくて、当日の見せ方とか、運営の仕方も本当にこだわっていかないと(いけないし)、周りにもいろんなイベントがあるなかでやってきたから。逆に全部、結城っていう舞台をコンセプトにやっています。

野口 やっぱり尖がっているとかそういうイメージになれば、結城は勝負する場所という認識をしてもらえるので。

◼︎街に合った、 和テイストのちょっと尖った部分もられる

――JUN INOUEさんは?

野口 昨年2回、来てもらって。彼はもともと書道家で、それから、ニューヨークのグラフィティ、らくがきの文化から、それを自分なりの特徴のあるタッチで、今すごく活躍している人たちなんですけど。良い意味で、結城に合った和テイストでありながら、ちょっと尖がった部分を出したいというコンセプトで、「あの人とうまくコラボレーションできたら、結城としても、なんかすごく箔がつくのかな」というところもあって。

――結城と相性がいいですよね。

野口 神奈川の人なんですけど、いろんなところでイベントをやっていて。実は、前橋(群馬県)でライブペインティングをやっているときに、実際に会いに行って、「こういうこと(『結い市』)をやっているんです」という話をしたんです。以前からメールではやり取りしていたんですけど、やっぱり実際に会うと、気持ちの伝わり方が違って、そのとき口説いて来たっていう感じですね。

みなさん、必ず1回は、結城に来て出演いただいたことがあって。当然、期待外れだったら、もう来てくれないし。やっぱり、2回目、3回目と、「来たい」って思ってもらえたってことは、それなりに、結城に対しても、きちんと買ってくれていて。みなさん、ただの興行じゃないし、イメージ商売だから、それがひとつのプロモーションにも繋がっていくし。そういう部分がうちらとしても、うまくお互いにWin-Winの関係になっているのかなと思っています。

ミュージシャンの人たちの間でも『結い市』、結城と絡んで、うちらがプロデュースするイベントに出ることが、ひとつのステイタスになりつつあるようで、それは嬉しいことですよね。

「出してほしい」って言ってもらえるようなメールもたまに来るんですよ。「もう恐縮です!」みたいな感じなんですけど。でもそれを意識しながら、組み立てて来たので、ようやく成果が出てきたのかなって気はします。

――『結い市』『結いのおと』は、全国的にも結構、知れ渡っているんですね。
野口 「結城というところで、『結い市』とか『結いのおと』あるよね」みたいな感じでね。

◼︎結城が大好きな人へ“ 結いプロ”で素敵な未の街づくりしてみませんか?

――ちなみに、今年の『結い市』の準備で、“今だから言える裏側エピソード”はありますか?

野口 年々やっぱりね。ここ同士(飯野と野口)でやってきているなかで、ちょっといろいろありました。メンバー間の周りの環境がどんどん変わってくるから。たとえば、気心を知れた人たちが、手伝えなくなってきたり。市役所の人が県に出向しちゃったりとか、「(メンバーでも)一緒に来ていた人が結婚しちゃったから、今年は手伝えない」とか。

長く付き合えば付き合うほど、役割を担っていくんだけど。たとえば、今まで5人でやっていたのが、ひとり、ふたり…と来られなくなると、メンバーの数は変わらなかったとしても、今まで積み重ねてきて、こういう(飯野と野口)ところの動きも変わってきちゃう。たとえ10人いても、ずっと同じ顔(メンバー)で続けられない。そんななかで、段々とこのふたり(飯野と野口)になってきて。以前は10人同じ子でやって来られたけど。少しずつ変わってきています。

――まずは自分たち側のスタッフを巻き込みながら、前へ進んで運営していくという。

野口 でも、『結い市』が近づいてくると、段々ね、雰囲気であったり、いろんなところで、そういう要素が出てくると、やっぱり、みんなそっちに向いてくれるから。まぁ、うちらがいかにそれを、そういう方向に持っていくか。やり方だと思うんですよね。

――現在は、『結いプロジェクト』のボランティアメンバーは募集しているんですか?

野口 募集しています。たとえば今回も、全然知らない女の子、3人組で、ずっと結城に住んでいて、勤めは東京に行っているらしいんだけど、「『結い市』手伝いたい!」って来てくれて。

――“結城が好きな子”。素敵ですね!では、今現在の『結いプロジェクト』が目指しているところは?

飯野 やっぱりね、(結城市の)街に新しいプレイヤー(人)を呼び込むっていうことですね。もともとは、結城駅の北側ではじめたことで。商店街、街自体が、高齢化して衰退していく中で、どうやって結城の良いものを次に繋げていくか。結城らしさの価値を理解してくれる人を呼び込んで、この街の次の担い手になってくような、仕組みづくり“人と街を結ぶ”っていうのが、僕たちの根本理念になるのかな。これからの人をつくっていくということですね。

◼︎結いプロが目指しているものは?

野口 うちら(飯野と野口)としては、やっぱり結城の『結い市』をやったり、『結いのおと』をやったり、かっこいい『yuinowa』をつくって。そういう結城という場所の土壌づくりをしていくなかで、「あ、こういうことが俺だったらできる」っていう部分を幅広く持ちつつ。かつ、うちらが、発信していきたいところは、音楽だったり、芸術だったり、サブカルチャーだったりみたいなところで。

なんかそういう面白い人材が結城に来やすい環境づくりを考えているなかで、『yuinowa』という場所ができたので、街的な部分を動かしたいっていう人や興味があったりする人は、ぜひ『yuinowa』に、来てもらえば、うちらと一緒に何か結城で面白いことやれたらと思っています。

――結城で何かやりたいなと思ったら、『yuinowa』に来れば、飯野さんや野口さんにご相談できるということなんですね。

野口 基本的に『yuinowa』のスタッフが自分(野口)だったり、飯野くんに繋いでくれるので。何か考えていることとかモヤモヤしたものが浮かんでいるのであれば、来てもらって、まずそれを形にできるような、お手伝いをしたいと思いますので。いつでも待ってます!

飯野 やっぱり、目指しているところは、これからの結城の街で、面白いこの街を好きになってもらって、そこで共感できる人をつくっていきたい。だから、まずは、『結い市』が入り口に、『結い市』の入り口となって、この空気感を本当に共感できる人が集まって来る場所として、ここ『yuinowa』をつくりましたし。

だから、そこから先の、いろいろなイベントをやっているのも、そういう感性が近い人が共感できるように、うちらが出しているメッセージをそこで、良いと思ってくれる人を。なんか結城の街でやろうって言っても、これだけ古い街でやっていくのに、そういうビジョンを共有できていないと(難しいかもしれません)。

野口 ここ『yuinowa』は、面白い人材を誘致して来る場所だし、結城自体が、誘致できるようなフックにならないとはじまらない。無理やりこの(『yuinowa』)場所をつくったんですけど、魅力的な人をそこに置いて、来てくださいって言っても、その人を目指しては来るかもしれないけど、場所を目指しては来ない。だけど、うちらは、その場所も面白くするし、人も創るし、トータル的に結城っていいなという人が街の魅力になって、場所が街の魅力になれば、それが一番良い。そういうことができればいいなと思っています。

今までは、こういう(『yuinowa』場所自体がなかったから、そういう人たちが来られて、人材の誘致があって、それを育成して、それが後に、労働の場に結城自体がなれば、結城で稼ぐ力もつくし。それこそ国がやっている、地方創生という、そこに行きつくと思うんですよね。

飯野 やっと『結いプロジェクト』のやりたいことが、ここ『yuinowa』ができたことで環境が整って、街の人たちとの関係も良くなったし、外からも『結い市』『結いのおと』を観てもらえるようになったけど、本当はこれからだと思います。でももう実際に、結城で出すお店も増えてきました。最初はこんなこと、考えられなかったから、「どうやったら、本当に結城の街でお店出してくれるのかな?」って、結構本気で悩んだもんね。

◼︎「ある家では、年『結い市』に、家族・親戚が全員集まるんだって!」

――では、これまで『結いプロジェクト』の活動を通して、いろんなことはあったかとは思いますが、なかでも特に、良かったこと、大変だったことは?

野口 良かったことはいっぱい。この『結い市』の認知度(が高くなったこと)だったり、自分たちの(『結い市』で)「見せたい!」っていうものになっているってこと。とあるおばちゃんの家では、毎年、この日になると、親戚、家族が帰ってくるんだって!

飯野 孫が全員集まるんだって、『結い市』の日は。それも、お盆か正月か『結い市』かみたいになっていて。

野口 その一個人的な流れの祭りから、そういうところまで発展できたのは、すごいなと思いました。    

――街の一般家庭にまで、影響が広がっているんですね。

野口 そういう人がいるってことは、自分の存在価値にもなっていくし、喜びを感じますね。逆に大変だったのは…。(笑)

飯野 大変なこともいっぱいあるよ~。(笑)

野口 たとえば、作家さんとか家主さんとスタートからゴールまでうまくいっている気になるけど。やっぱり、それなりにトラブルがあったり、作家さん同士でちょっとうまくいかなかったり。言わないけど、あの人とはできないってなることもあるから。うちらが勝手に良いと思って、マッチングするんだけどね。当然、希望は聞くんだけど。そういった、ちょっとしたトラブルがあると、お互いに嫌な気持ちになっちゃうよね。

――でも、それを承知の上で動けているのは、やっぱり自信があるから?

飯野 もう、これだけのこと(『結い市』)を街なかに、全部持って来ようとしてやったから。まぁそれは、うまくいかないことだらけ。もう、場所は難しいし、人の関係もつくっていかなきゃいけない。だから、それらに(真剣に)向き合ってきたからこそ、逆に、今、街の人とこういう(うまくコミュニケーションが取れる)状態になっています。大変だけど、今、みんなと良い関係でできているというのは、もうそのすべてが財産ですよね。

――調整っていうのは、想像できないくらい大変なことですよね。
野口 でも、もう、わりと流れのなかにハマっているから、そんなに。まぁ、楽ではないけど、そこまで大変だなとは思わないよね。

飯野 最近はね。最初の頃だよね、顔を(出して)。一件一件、(挨拶、説明、お詫びに)回ったり…。

野口 歩行者天国のお願いをしに、関わってくる家主さんを回っていると、「いや、この日、出掛けなきゃいけねぇから、どうするんだ!?」って。お互いにいろんな自己主張あったりするけれど、結果的には、うちらの動きであったり、協力してくれる人たちもちゃんとわかってくれたし。回をどんどん続けていると、最初から「あ、わかったよ!」ってサインしてもらえるようになりました。

すると昨年、そこも実は初めていろんな摩擦があったんだけど、わりといまはスムーズに。だから行政の市役所もひとつ事例ができれば、やっぱり通りやすいです。もうわりと『結いプロジェクト』ならって、支援をしてくれる。

◼︎ 街を彩る、素敵なお店がえてます

野口 「こういう(『結い市』のマルシェ)店が(結城に)あったらいいな~!」って思ったし。やっぱり、そういうお店ならみんなに観てもらえるんだなって。

でも、うちらは半信半疑で、「本当に結城につくってもらえることなんてあるのかな?」って、はじまった当時は。『yuinowa』もそうだけど、『FLOUR BASE 105』さんみたいな、あんな店なんか、「どうしたら出してもらえるかな」って思っていたもんね。

飯野 話があっても、やっぱり、物件がうまくいかなかったり、そうこうしているうちに、他に店出しちゃったり。それがずーっと続いていたけど、ここ数年やっとね。

野口 『御料理屋kokyu.』さんとかが、はじまったのがあるなと。

飯野 『結い市』をはじめてからできたお店だと結構あるよね。

野口 『御料理屋kokyu.』さん、『Soup shop グッドオールド』さん、『ぱんや ムムス(mums)』さん、『FLOUR BASE 105』さんとか。

飯野 『結城澤屋』さんも、自身で自己実現していきたいっていう気持ちで、『奥順』さんの敷地内に、新しい着物コンセプトショップを立ち上げたっていうのも。

野口 あと、『結の見世』さんっていうのは、紬の小物のショップで。それも新しいところにチャレンジしたいという気持ちがあって、『結いプロジェクト』であったり。そういうコンセプトで出したいという想いから、出店できています。あと、『手紙社』さんが来たり。

――すごくありますね。

飯野 なんだかんだで10件ぐらい、本当にそういう動きが出てきています。

――新しいお店、ワクワクしますね。とても楽しみにしています。

**≪Profile≫ **
●結いプロジェクト
結城市の官民共同出資による街づくり会社『株式会社TMO結城』が主宰した、地域活性化を目的とする任意の地域ボランティア団体。『結い市』『結いのおと』などを主催する。

● 野口純一さん
(『結城商工会議所』職員)
『結いプロジェクト』発起人であり、事務局として活躍中。『株式会社TMO結城』の事務局も務める。

●飯野勝智さん
(『NIDO一級建築士事務所』代表) 『結いプロジェクト』代表。『株式会社TMO結城』役員としても活躍中。

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