自家製:FIPPF

過去のfWARのアップデートを追っていく中で以下の記事を見つけた。

雑にまとめると、FIPをベースにしてるんだから、得点ではなくFIPのPFで補正をするほうがいいんじゃないかというもの。この提案を支持する形で、以降FanGraphsはFIP(厳密にはポップフライを三振とみなしたifFIP)をFIPのPFで補正している。fWARのグロッサリーでもその記述自体はあるが、恥ずかしながら見落としていたうえ、こういう背景があったことも知らなかった。各シーズンのFanGraphsによるFIPPFはここで確認できる。

FIPにとってはその分子の係数からして、HRが持つ影響はかなり大きい。一方、RPF(通常用いられるPF)では投手不利の傾向だがHRは出にくい、あるいは投手有利の傾向だがHRは出やすいといった特徴を持つ球場は確かにある。例を上げるなら前者はカウフマン・スタジアム、後者は近年のリトルリーグ・スタジアムが該当する。

ドカ・ペースト
ドカ・ペースト2

で、先の記事ではその方法として、単純に

$$
\rm{\frac{(13×HRPF-2×SOPF+3×BBPF)}{14}}
$$

でFIPPFを算出していたが、コメント欄に現れたアペルマンやタンゴによると、どうやら正しいやり方ではないらしい。そのあと他サイトやXでその方法を探してみたが見つからなかったので、自分でやることにした。自家製FIPPFの誕生である。

ところでPFの算出の方法は以下のページに大体書いてある。

例えばGABPのPFを算出するには、GABPでのレッズ(とその相手)の結果と、アウェーでのレッズ(とその相手)の結果を比較する。ただし、皆ホームとアウェーで同じようにプレーするだろうという前提があり、これを著しく破壊するような掟破りのチームが現れた場合はまた別の話になるかもしれない。ロッキーズに期待しよう。

この方法は、よくWOWY (With Or Without You)とかいって昔からPFだけではなく色んなところで使われている。元ネタは多分U2。

ちなみにStatcastは更に複数のアプローチを有する。

で、FIPはHR, SO, BB, HBP, IP, ER (cFIP) で構成されており、大枠としてはこれらそれぞれについてWOWYをやればいいということになる。が、一からやるのは面倒なのでガッツリサボることにする。最終的には2023のFIPPFを算出したい。流れは以下のとおりだが、誤っている可能性はある。

  • SavantのPFを用いる

  • HBPのPFは無視する(≒どの球場でも偏りなく起こると仮定する)

  • 算出過程の小数点以下はうまい具合に丸める

  • 2021年から2023年のFIPPFをシーズンごとに算出する(このnoteでは未実施)

  • 近いシーズンから順に5:3:2で加重平均をとる(このnoteでは未実施)

とりあえずcFIPを計算する。

$$
\begin{array}{}
\rm{cFIP}&=&
\rm{lgERA}-
\frac{13\times\rm{lgHR}-2\times\rm{lgSO}+3\times(\rm{lgBB}+\rm{lgHBP})}
{\rm{lgIP}}&=&
3.112
\end{array}
$$

GABPを例とする。HRPFは131 (3 year rolling: No) だが、これは全ての試合をGABPで行った場合の値なので、正味のHRPFは$${(131+100)\div2=115.5}$$となる。SOとBBについても同様の計算をすると、それぞれ102, 104が得られる。

それらを含むPF群は2022年の環境に対するものなので、2022年のFIPPFは2022年のFIPを構成する各イベント、すなわち5215 HR, 40812 SO, 14853 BB, 2046 HBP, 43075.3 IPに対するものであることに注意する。これが最初に上げた記事のコメント欄でタンゴが指摘したことの私の解釈であり、最もフワフワしている部分でもある。以下の引用はその内容。

This is wrong:

((13*HRPF)+(3*BBPF)-(2*SOPF))/(14)

You can’t wait the factors this way. You have to weight them by the coeffient times the frequency of those events.

Imagine for example that this is 1908 and there are almost no HR in the league. We obviously would want that to have a tiny impact overall.

ドカ・ペースト3

GABPにおけるFIP (HomeFIP) は

$$
\begin{array}{}
\rm{HomeFIP}&=&
\frac{13\times1.155\times\rm{lgHR}-2\times1.02\times\rm{lgSO}+3\times(1.04\times\rm{lgBB}+\rm{lgHBP})}
{\rm{lgIP}}+3.112\\&\simeq&
4.215
\end{array}
$$

GABP以外におけるFIP (AwayFIP) は

$$
\begin{array}{}
\rm{AwayFIP}&=&
\frac{13\times\rm{lgHR}-2\times\rm{lgSO}+3\times(\rm{lgBB}+\rm{lgHBP})}
{\rm{lgIP}}+3.112\\&\simeq&
3.968
\end{array}
$$

したがって、2022年の結果だけを用いたGABPのFIPPFは

$$
\begin{array}{}
\rm{FIPPF}&=&
1-(1-
\frac{4.215\times30}
{3.968\times29+4.215}
)\times0.6\\&\simeq&
104
\end{array}
$$

となる。この作業を残りの29チーム分についても行う。

ドカ・ペースト4

参考として、2022年のFanGraphsによるFIPPFとSavantのRPFを横に並べた。明らかにカージナルスがズレているが、単年で行ってこんなもんなら十分な気もする。一旦この年限りで引退したモリーナが原因ということにしておき、深追いせずにいようと思う。

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