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売れないロックバンドを応援する意味ってあるの?

a flood of circleというバンドを好きになったのはだいたい10年ぐらい前だけど、第一印象は「CDジャケットがダサすぎる!だった。



見てもらえばわかるんだけど、なんかコラージュがちょっと怖い。インディーズ感あふれ出てるし、バンド名もやたら長い。

それをなんでTSUTAYAの試聴機にわざわざ持ってったのか未だに思い出せないけど、たぶん本当にめちゃくちゃヒマだった。その頃は学生で毎日ヒマを持て余していて、TSUTAYAでCDを何時間も聴くのが日課だった。



で、そのTSUTAYAで「泥水のメロディー」を聴いて以来、私は今までずっとフラッドのファンを続けている。
冒頭でジャケがダサいって言ったけど、いまや ダサいとかダサくないとかじゃないんだよ とか力説するタイプの鬱陶しいファンになった。

※ちなみにa flood of circleは 決してジャケやPVがスタイリッシュなバンドではない と今も思っているけれど、それが良いとも思っています



聴いたことがある人ならわかると思うけど、フラッドはミッシェル・ガン・エレファントみたいな佐々木亮介のハスキーな声とブルース・ロックが特徴の、いわゆるやかましいロックバンドで、最近流行りのおしゃれなシティ・ポップからはほど遠いし、世の中で売れまくってる打ち込み音楽とかもう全然違う。



でも、本当にカッコよかった。3曲目のRed Dirt Boogieを聴いたときは ロックバンドってこんなにカッコいいこと出来るんだ と心底思えた。6曲だけのミニアルバムで、その6曲だけを何度も聴いた。家でCDを聴きながら、始めたばかりのエレキを抱えて「いつかフラッドを絶対弾こう!」とか思っていた。

絶対売れると思っていたし「こんなにいいバンドをインディーズの頃に見つけたなんて最高では?!」とか心の底から思っていた。



それからフラッドは初のフルアルバムをリリースした。ライブをして、シングルを出して、ギターの岡庭さんが失踪した。失踪したことで話題になって、岡庭さんのことを歌ったっぽいコインランドリー・ブルースって曲とか出した。

ROCK IN JAPANみたいなロックフェスに出て、3人でも大丈夫だぞって感じになって、タイアップとか取れてきた頃、ベースの石井さんが脱退した。新しくHISAYOさんがベースとして入ってきたら、今度はギターがコロコロ変わった。



その頃のインタビューは、ギターが失踪したことをよく話させられていた。私もフラッドのファンだというと「あのギターが失踪したバンドだよね?」って言われたりした。

「メンバー変わりすぎじゃないの?」と友達に笑われたこともあったし、バンドとして一番勢いがあるはずの時期をメンバーチェンジで失ったバンド と書かれた記事を読んだこともある。



でも、その間私はずっとフラッドのことが好きだった。シングルもアルバムも楽しみだった。私も15年ぐらい音楽ファンをやってきたから好きなバンドはたくさんあるけど「全曲好きだ」と言い切れるバンドは多くはない。

フラッドは全曲好きって言える数少ないアーティストで、Summertime Blues Ⅱ みたいな どうしてそうなったんだ みたいなゴリゴリのシブいブルース曲も、YU-REI song みたいな 突然のかわいい系ソング でも、フラッドがやると急に芯の通ったロックンロールになってしまって、それがめちゃくちゃにカッコよかった。



フラッドはメンバーが変わってからも数え切れないぐらい曲を出して、ライブツアーも死ぬほどやった。ベストアルバムを出したりもして、ライジングサンロックフェスではそこそこのステージで大トリを務めたりもした。


そのたびに、次こそはフラッド売れるのかなと思ったりした。デビューからしばらく経ってしまったバンドが、急に売れることはあんまりない。音楽をずっと好きでいる人だったら、皆知ってることだと思う。

それでも売れるかなと期待をかけてしまうのは、フラッド自身が今も「悔しい」「売れたい」と言い続けているからだ。




この前、フラッドが出した写真集に、ボーカル・佐々木亮介のインタビューが載っていた。

いつも通りのストイックな暑苦しいインタビューで、転載していいのかわからないけど、少しだけ紹介させて欲しい。


今の俺、めちゃめちゃ曲ができてるんですよ。たぶん俺がイライラしてるから(中略)何でイラつくのかって? バンドがこんなにいい状態で、いいライヴやってるのに、動員に結びついてないってことですよ。それが悔しいというか、観に来てくれたファンの人にも申し訳なくて…
だって俺……悔しいから。群れてるもんがすべて正しいならロックなんていらねえじゃんって思うけど、こんなカッコいいバンドのファンなんだって、みんなが胸張って言えるような結果を残したい。



私はフラッドというバンドが好きだし、長い間ずっとファンだし、インタビューも全部でなくてもかなり読んでいる方だと思うけど、佐々木亮介のインタビューを読んだとき、全然違うよと思ってしまった。私は、たぶん私達は、こんなこと言って欲しいわけじゃないんだよと。



私は10年ぐらい前のTSUTAYAの棚で、平置きですらないCDを聴いてフラッドを知った。売れそうなバンドって信じてたし、友達に勧めてみたりもした。下手くそなギターでコピーもしたし、CDも買うしライブも行く。



でもそれから10年経ったいま、まわりにフラッドを自分ほど好きな人は誰もいなくて、ライブだって結局ひとりで行くしかない。いろんな友達に勧めてみたけど、どれだけ仲が良い友人でも、音楽の好みまでは一致しない。皆と行くカラオケでは気を使ってフラッドの曲は入れられないし、仕方ないから売れてる他のバンドを歌う。
誰かに「一番好きなアーティストは?」と聞かれたときは「邦楽ロックが好きなんです」としか答えられない。「一番好きなのはフラッドです」と言ってみても「知らないな」とシラけさせるだけだから。



でも、そんなこと全部どうでもいい。私はライブに人を集められるバンドだからフラッドを好きなわけじゃない。もっと頑張れとか、ファンに感謝して欲しいとか、思ったことなんか一回もない。



佐々木さんはインタビューで「結果を残したい」と言ってくれた。こんなカッコいいバンドのファンなんだって、みんなが胸張って言えるようにと。



でも、大きなお世話かもしれないけど、何様だよって感じだけど、お言葉を返すようだけど言わせてください。私にとってフラッドが残した一番の結果は、作品とかライブとか、この10年でやってきてくれたすべてのことで、私がフラッドに願うのは、この先ほんの一秒でも長い間、自分たちが納得のいく音楽を続けていってくれることです。売れることはもちろん大事で、売れないのに続けられるほどバンドが甘いとは思わないけど、でも売れても売れなくても私はフラッドのことが好きだし、今までもこれからもフラッドが納得した音楽を聴きたいと思ってる。申し訳ないってなんなんだよ。結果を残したいってなんなんだよ。ふざけんなよ。そんなこと言うな。結果はずっと出してくれてる。フラッドの曲が、ライブが、全部がファンとして胸張れるような結果だよ。



noteで「#いまから推しのアーティスト語らせて」っていうタグを見て、フラッドのことを書こうと思った。私はロックバンドが大好きで、たぶん死ぬまで好きだと思う。でもそうではない人はたくさんいて、最近はロックバンドは流行ってない。佐々木亮介も何度も語っているけれど、ロックはトレンドじゃなくなったし、世界的な流れを見てもバンドが売れることはかなり難しくなっている。


だから、この記事を書き始めたとき「売れないロックバンドを応援する意味ってあるの? 」って書いた。好きなバンドを答えても「なんでそのバンドが好きなの?」って聞き返される。「売れてないのに」って言われたりもする。人前では歌うどころか名前を言うのにも気を使う。一番好きなバンドのことを皆が知ってて、皆も好きでいてくれたならどれだけ楽だろうと思うこともやっぱりある。


でも、そんなこと全部ひっくるめても、意味はあるって答えたいです。ライブの動員数ではなく、売れたCDの数ではなく、楽曲すべてライブすべてに惹かれて私はファンになったから。チャートが悪くたってかまわないです。ライブ会場が小さくたって全然いいです。だから、納得いくまでロックバンドを続けて欲しい。私が好きなバンドを好きである意味は、バンドが生み出す音楽すべてのためだから。結果を出したいって言わないで。結果はもう出してるから。胸張ってもいいですか。私はこんなにもカッコいいバンドのファンなんです。私が一番好きなロックバンドは、a flood of circleです。


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