夜の海にナイフを棄てる

何十年も研ぎ続けられたそれは
《機会》さえ与えられたなら

相手の心臓から脳から
なにもかもを引き摺りだして
解体できるものでした

自衛、復讐、制圧、威嚇
かつて必要とされた時になかったナイフは

もはや《必要とされる時》を失っていました
痙攣したまま動かぬ秒針

(なんということでしょう)

サビ一つない刃は滑らかな光を反射するものの
それは船を惑わせ過去に縛りつけるための
呪われた灯台の光でしかない

夜の海にナイフが消える

私はもう誰も傷つけないことを決意する
(少なくとも意図的には)

たとえ石を投げられたとしても
わたしはもう傷つかないし
傷ついてもすぐに治せる家があるから
恐れるものはなにもない

必要なのは(過去のリピートとしての)未来への備えではなく

今からすべてに繋がる祈り

自然栽培・オーガニック食品の生産者に還元します