本当は、夢の中に飛び込んで君を守りたかったんだ
深夜です。
(なぜ、目が覚めたのだろう)
尿意があるわけでもなく、ちょっと不思議な感じがしました。
どうやら、僕が目覚めた理由は、ゆかりちゃんのうめき声のせいです。
ゆかりちゃんが、なにか言っています。
たぶん、寝言です。
何を言っているのかと、聞くことに意識を集中しましたが、ゆかりちゃんの言葉は聞き取れません。
「ボソボソ……」
と、ボリュームが小さ過ぎます。
少し、寝言のボリュームが大きくなりました。
「たすけて…」
と言っています。
僕は迷い、ためらいました。
「寝言に話しかけてはイケない」と、聞いたことがあるからです。
「たすけて」
「たすけて! たすけて‼」
ボリュームがどんどん大きくなります。
「たすけて~~~~~~!!!」
もはや絶叫。
致し方ありません。
「大丈夫?」
と、僕は、僕史上最高の”やさしい声”で語りました。
「僕がいるから安心して」
と、そ~っと、ささやきました。
ゆかりちゃんの左肩に、僕の右手をそっと置きます……。
その効果があったのか?
ゆかりちゃんの悲鳴が止まりました。
ゆかりちゃんは目覚めることなく、眠ったままです。
寝息さえ聞こえません。
顔を覗き込むと、いつものキレイな顔で眠っていて、その様子は
「すやすや」、です。
枕もとのデジタル時計を見ると、時刻は0:31でした。
* * *
朝になり、以上のことをごく簡単に、ゆかりちゃんに説明しました。
「全然覚えてな~~~い」
「ウソでしょ?」
「ほんとう?」
「じょーじの夢じゃない?」
「じょーじが、そういう夢を見たのよ~」
と連呼します。
ゆかりちゃんの表情から、照れ隠しなのが分かります。
きっと、少し嬉しいのです。
僕も、少し、嬉しくなりました。
* * *
実は僕。
怖かったのです。
「僕がいるから安心して」
と、ささやいた瞬間、
「ギャーーーーーッ!!」
と、悲鳴が大きくなったならどうしよう。そう想像して怖かったのです。
優しく肩に触れた僕の手を、
「ベシッ!」
っと弾かれたなら、どうしよう。
そうなったなら、メッチャ凹みます。
だから怖かった。
誉めてください。
僕の勇気を。
誉めてください。
僕の優しいささやきを。
ゆかりちゃんは、照れくさいみたいです。
神様。
僕は、がんばりましたよね。
僕は、ゆかりちゃんが大好きです。
おしまい
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