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灯台下暗し作戦、大成功だったのだが… (モッタイナイ【純粋な瞳】の使い方)

18:00を少し過ぎた。
まもなく、妻のゆかりちゃんが帰ってくる。

いつものように「帰ります!」lineがあり、約30分が経過している。
今すぐ、玄関の鍵がガチャガチャ鳴ってもおかしくない。

ひらめいた!

隠れよう。

ならば急がねば。かつ、ちゃんと驚かせたい。
ゆかりちゃんのビックリした顔が見たい。いや、呆れた顔になるかな。

おっと、そんなことを考えている時間はない。
さて、どこに隠れるか? 

簡単に見つかるところは、絶対にダメ。
ゆかりちゃんに、しばらく探し回ってもらいたい。

バスタブの中や押し入れの中はNG。
ゆかりちゃんの右往左往する姿を、僕が感じ取れない。

ひらめいた! パート2!

灯台下暗し作戦だ。

LDKに入ってすぐの、このダイニングテーブルの下に隠れよう。
4つのイス全てを少しずつ引いたなら、中央にスペースができるはずだ。

即実行だ。
その中央の狭いスペースに、僕は侵入した。痩せてて良かった。

・・・。

ひまだなぁ。

テレビをつけて来ようか。
テレビがついていても、・・・不自然ではない。
しかし万一、このタイミングでゆかりちゃんが帰宅したならば、これまでの努力がパーになる。

あ、買い物!

今日、買い物をする日だったならば、僕は今から30分も待つこととなる。
30分も退屈って、辛すぎる。

イスをずらし、ダイニングテーブルの下から出て、僕はテレビをつけた。
急いで、再度ダイニングテーブル下に潜り込む。

「くそっ!」 と声が出た。

テレビまでの視界を、パーソナルチェアが塞いでいた。

また僕は、テーブルの下から出て、視界を遮っていたパーソナルチェアの位置を少しズラした。

急ぎ、ダイニングテーブルの下に戻る。
玄関から物音がするのではないかと焦る。

今度はちゃんとテレビが見えた。
4脚のイスを、僕の身体に可能な限り近づけた。

僕は、あぐらをかいて座っている。
できるだけ小さくなっている。頭がテーブルにぶつかるので、こうべを垂れ背中を丸めた。
その姿勢から上目使いでテレビを見る。

50代には、かなり辛い姿勢だ。
腰も首も、そして目も疲れる。

ゆかりちゃんの帰宅が遅い。今日はスーパーに寄る日だったのか。

疲れた。やめたい。
でも、せっかく隠れたし。

いや、そもそもこんなのウケないのではないか。
ドン引きされるだけかも。
鼻で「ふっ」って笑われて、それで終わるかもしれない。

僕は、やめる理由を探しているではないか。
ならば素直にやめちゃうか。

その時だった。

ガチャ


玄関の鍵の音がした。
ゆかりちゃんが帰ってきたのだ。

僕は、息を殺す。

「ただいま~」と、ゆかりちゃんが言った。

シ~~~ン

「あれ? じょーじ、いないの?」

シ~~~ン

「ただいま~」と言いながら、ゆかりちゃんは和室に行った。

(ふふ。そんなところにはいませんよ)


「あれ? ホントにいないの? トイレかな?」

(ふふふ)

「お風呂場か?」

ガタガタ

(風呂のフタを開ける音だ)


「いな~い」

(そんなベタなところじゃないよ~)


「出かけたの? いや、テレビついてるし・・・」

(疲れたし、もう出よう)

「ここだよ~」と言いながら、僕はダイニングテーブルの下から出た。


ゆかりちゃんは、「なにやってんの~⁉」といいながら、メッチャ笑ってくれた。

灯台下暗し作戦は大成功だった。


🍀🦖🍀🦖🍀🦖

しばらくして、僕は、このことを話題にした。
するとゆかりちゃんは、

「そんなこと、あったっけ?」


と、のたまった。

ゆかりちゃんは、嘘のカケラもない純粋な瞳をしていた。

(コイツ、純粋に忘れやがった・・・)

僕は、ゆかりちゃんが大好きです。






おしまい


※この記事は、エッセイ『妻に捧げる3650話』の第1483話です
※この記事は、過去記事の書き直しです

PS. 僕のKindle本 ↓『いいかい、タケルくん』【考え方編】です。


読むと、恋人ができてしまう自分に変わります。
恋愛とは、若者だけのものではありません。

人生100年時代。
40代、50代、60代、70代でも、恋愛って必要です。(僕の主観です)
そばにいるパートナーは、誰にだって必要ですよ。(僕の感想です)

「考え方」ですから、若者だけでなく中年にも参考になります。
もちろん若い男性には、モロ、参考になります。

女性にも参考になります。
【男の思考】が詳しく書かれていますから。
「男性って、そんな考え方をするんだぁ」と、きっと参考になります。

ご一読いただけたら幸いです。

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