沈黙は沈黙だけにあらず、決して無音ではない
マックス・ピカート(1888~1965:ドイツの医師、哲学者)は、その著書「沈黙の世界」の中で、語っている。
「言葉は、遠方からやって来る。
忘れられた世界からやって来る。
沈黙だけがそれに耳を傾けることができる。
沈黙を通して、言葉は語られなければならない。
そうして初めて、会話に広さが与えられる。
言葉に豊かさが戻って来る。
沈黙によってのみ、それは可能なのだ。
たとえば2人の人間が対座している。
2人は差し向かいで語り合っている。
けれども言葉は、
2人の話者の間の狭い空間を、
ただ行き来するだけではない。
そこには常に、姿の見えない第三者が居合わせる。
目に見えない第三の物が。
それが沈黙だ。
この第三者の存在に敬意を払い、挨拶を送ろう」
対座する相手が黙っていたとしても、ただ、黙っているだけではない。
次の言葉を出すまでの間、言葉には出さず、何かを語っていることもある。
それを、忘れてはならない。