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長恨歌(11)

忽聞海上有仙山  山在虚無縹緲間
楼閣玲瓏五雲起 其中綽約多仙子
中有一人字太真 雪膚花貌参差是
金闕西廂叩玉扃 転教小玉報双成
聞道漢家天子使 九華帳裏夢魂驚


突然 耳に入って来たのは 海上に仙人が住む山があるという話。

その山は 遠く ぼんやりとした空のあたりにあるということなので 道士はもしやと思い懸命に探し ようやく それらしき山に たどり着きました。

着いてみれば 玉のごとく輝かく楼閣 その周りには五色の瑞雲が沸きたち こここそ 仙界の山と確信します。

そしてその楼閣の中には あまたのたおやかな仙女であふれています。

道士は その仙女たちの中に 一人の太真という名前の仙女を見つけました。

雪のような白いお肌に 花のような美しいお顔

道士は この太真こそ まさしく楊貴妃と確信します。

黄金でできた門をくぐり 西のお部屋の前まで進み

その玉の扉を叩くと 出てきた小玉を介して双成に取次を頼みます。

太真は 関帝の使者のお越しを耳にして

花を散りばめたとばりの中で 夢からはっと目覚めた様子です。

※海上有仙山:東海に三つの仙人の山があるという伝承から
※五雲:仙界にふさわしい五色の瑞雲
※綽約:美しいという意味
※太真:楊貴妃は本来は玄宗皇帝の息子の寿王に嫁いだ。しかし玄宗皇帝が楊貴妃の美しさに惚れ込み、息子寿王から取り上げてしまった。
楊貴妃は、「浄め」の目的で、一旦道観(道教の寺院)に入り、太真という女道士の名前を与えられている。
金闕:黄金の宮門
西廂:宮殿正殿の西の脇部屋で女性の居室
玉扃:玉でできた扉とカンヌキ
転教:転は順次に取り次ぐこと、小玉、双成は侍女の名前。
九華帳裏:花を散りばめたとばりの中。


○道士は仙界にようやく、仙女となった楊貴妃を発見します。

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