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紫式部日記第87話「雪を御覧じて、折しもまかでたることをなむ、

(原文)
「雪を御覧じて、折しもまかでたることをなむ、いみじく憎ませたまふ。」
と、人びとものたまへり。
殿の上の御消息には、
 「まろがとどめし旅なれば、ことさらに急ぎまかでて、『疾く参らむ』とありしもそらごとにて、ほど経るなめり。」
と、のたまはせたれば、たはぶれにても、さ聞こえさせ、たまはせしことなれば、かたじけなくて参りぬ。

(舞夢訳)
(他の女房たちからも)
「(中宮様は)雪をご覧になられて、このような風情のある時に、あなた(紫式部)が自宅に下がっていることを、本当に気を落とされて、お憎みになられておられます」などと連絡があります。
その上、殿の北の方からのお手紙があり
「この私が里下がりを留めたりするものだから、あなたはことさらに急いで里下がりをしてしまって、『すぐに戻ります』と言うのも本心からではなくて、結局いつまでも里下がりをしているのでしょう」とおっしゃられるので、それは軽い冗談かもしれませんが、直々の御言葉でもあるので、申し訳なさもあり、参上することといたしました。

本心としては、宮仕えが好きではない紫式部。
当時宮仕えする女性は「軽い女」とされる風潮があったらしい。
あるいは宮仕えができない女性(スカウトされない女性)の嫉妬かもしれないが。
それでも中宮と道長の北の方から手紙をもらえば、無視は困難。
紫式部としても急いで戻らなければならない。

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