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伝道者の書最終回伝道者は言う、「空の空、いっさいは空である」と。

(原文:第12章8~14)
8 伝道者は言う、「空の空、いっさいは空である」と。
9  さらに伝道者は知恵があるゆえに、知識を民に教えた。彼はよく考え、尋ねきわめ、あまたの箴言をまとめた。
10  伝道者は麗しい言葉を得ようとつとめた。また彼は真実の言葉を正しく書きしるした。
11  知者の言葉は突き棒のようであり、またよく打った釘のようなものであって、ひとりの牧者から出た言葉が集められたものである。
12  わが子よ、これら以外の事にも心を用いよ。多くの書を作れば際限がない。多く学べばからだが疲れる。
13  事の帰する所は、すべて言われた。すなわち、神を恐れ、その命令を守れ。これはすべての人の本分である。
14  神はすべてのわざ、ならびにすべての隠れた事を善悪ともにさばかれるからである。

「伝道者の書」の最終になり、最初のテーマに戻った。
人生は、無目的で空しい。
伝道者は、自らの探求により得た知識を箴言の形にまとめ、民に教えた。
適切で麗しい言葉にするために推敲し、その結果得た、真理の言葉を書に書き連ねた。
伝道者は、様々、突き棒や釘のような鋭い表現を行った。
しかし、伝道者は、自分が語った言葉以外にも、気を配れと言う。
全てを記すにも、またそれを学ぶにも、人間の体力では疲れてしまい、無理であると、語る。

そして、最終的な結論は、すでに知られていること。
すなわち、
「神を恐れ、その命令を守れ」
「神はすべてのわざ、ならびにすべての隠れた事を善悪ともにさばかれる」

全ての事は、神には隠されてはいない。
すでに全てが、神の前に明らかになっていて、やがては善悪ともに、裁きにあう。
今が無事であるからと言って、そうではない。
そして、それを自覚しなければならない。

「神を恐れ、神の命令を守れること」は、全ての人間に課せられた課題と思う。
無思慮、無配慮からの傲慢な態度をあらため、謙虚な気持ちを忘れないこと。
出来る限り懸命に働き、その報酬からの飲食を楽しむこと。
成功は続かず、健康も年齢を重ねれば衰える。
それを自覚して、弱者は当然、他者に辛く接しないこと。
等々、特に新しいものはなく、すでに聞いて来たものばかりであるけれど、それを忘れてしまうのが、全ての人間の課題なのだと思う。

この「伝道者の書」の書かれた当時の時代と、現在の日本、世界との状況は異なる。
また、この「伝道者の書」が書かれた中東の文化と、日本の文化とは、異なる。
そもそも、「伝道者の書」における細かな文脈を、日本人がどれほど理解できるのか、そのような疑問も禁じ得ない。

しかし、そうかと言って、全く心に響かないという人は、少ないのではないだろうか。
どこか、時代も社会的、文化的、宗教的背景も異なる、今の日本人にも訴えかけてくるものが、確実にある。
そして、その「訴えかけ」を心に感じ取った時に、「今の時代、それから今後はどうするのか」、それを考え出すことになるだろう。
そして、「考え出した人」の心の中で、「伝道者の書」は、再び輝きを始めるのだと思う。

※「伝道者の書」これにて、終了といたします。
 ご愛読ありがとうございました。

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