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紫式部日記第130話斎院に、中将の君といふ人はべるなり(5)斎院と中宮御所の女房の違いについて

(原文)
されど、内裏わたりにて明け暮れ見ならし、きしろひたまふ女御、后おはせず、その御方、かの細殿といひならぶる御あたりもなく、男も女も、挑ましきこともなきにうちとけ、宮のやうとして、色めかしきをば、いとあはあはしとおぼしめいたれば、すこしよろしからむと思ふ人は、おぼろけにて出でゐはべらず。

(舞夢訳)
しかし、(中宮様がたの場所)の場合は、宮中などで、朝も夕も顔を合わせ、男性の方にも、日頃見慣れてしまっていますし、競い合う女御や后もおられない。
あの御殿の御方、あの細殿の御方と数え上げるような競争相手もおりません。
それだから、つい、男も女も、何の刺激もなく、安心しきって平和なのです。
また、中宮様のご性格として、男女の色ごと話など、実に軽々しい類いのもの、とお考えなので、すこしでも自分が人並みでありたい、と思う女房は簡単には人前には出て来ないのです。

中宮という、トップの屋敷に務める女房たちなので、他の(帝の妾を狙う)女性たちのような、ライバル関係は、そもそもない。
だから、競い合う刺激もなく、平和で安穏と日常をすごしている、と紫式部は、言いたいようだ。

確かに、帝の妾を狙う女性も多い。
中宮に万が一あれば、その座が自分に回ってくるかもしれないのだから。
そのため、同じようなランクの女性が他にもいるとならば、競争しなければならない(第二夫人の座を巡って)。
なかなか、気の抜けない、大変な生活とは思うけれど。

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