紫式部日記第43話御帳の内をのぞきまゐらせたれば、

(原文)
御帳の内をのぞきまゐらせたれば、かく国の親ともてさわがれたまひ、うるはしき御気色にも見えさせたまはず、すこしうちなやみ、面やせて大殿籠もれる御ありさま、常よりもあえかに若くうつくしげなり。
小さき灯籠を御帳の内に掛けたれば、隈もなきに、いとどしき御色あひの、そこひも知らず清らなるに、こちたき御髪は、結ひてまさらせたまふわざなりけりと思ふ。かけまくもいとさらなれば、えぞ書き続けはべらぬ。

※国の親:国母の意味。将来の天皇が約束された皇子の母であるため。
※あえか:やつれて。産後の疲れを表現する。
※かけまくも:言葉に出して言うのも。

(舞夢訳)
中宮様がおられる御帳台の中を覗かせていただきますと、とても国母ともてはやされるような、光り輝くようなご様子ではなくて、少し気分が悪そうな雰囲気。
顔も痩せられて。お休みになられており、いつもより弱々しいのですが、若く愛らしくも見えます。
小さな灯りを御帳台の中に掛けてあり、それに照らされたお肌は、とても清らかで、髪の豊かさは床姿の結髪では、より目立つものと、感じられます。
ただしかし、このようなことを言葉にするのは憚られるので、これ以上は書き続けられません。

紫式部は、弱りながらも、尚、美しい美を、中宮に発見する。
源氏物語に、紫上が体調を崩して弱りながらも、その美しさを褒める記述があったことを思い出した。

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