あんみつとワンピース 《上野》あんみつやみはし

 あんみつとは、なんて甘く懐かしい響きなのだろう。餡と蜜。その言葉を聞いただけで頬が緩んでしまう、そんな素敵な名前を持つあんみつ。
 あんみつといえば、みはし。あんみつに詳しくない私でも、その名前を知っている有名店。珍しく上野にまでおでかけしたので、みはしに行くことにしてみた。憧れはあるものの、入ったことのないみはし。とはいえ、実は私は正直あんみつがそこまで好きではない。ここまで上げておいて何を言い出すのかと思われるだろうが、あんみつという名前はそりゃもう好きで、ともすれば誘惑的で、それゆえ今までも何度かあの素敵な響きに誘われてあんみつを食べてみたことはあるのだが、つるっとした無機質な寒天とみつまめ、それから黒蜜がどうにも好きになれないのである。寒天もみつまめも黒蜜もダメと言ったら、あんみつのほとんどを否定していることになるのはわかっているのだが、それでもどうにも惹かれてしまう。あんみつといえばみはし、みはしといえばあんみつ。私はその店の代表メニューを食べることが好きなのだ。本当はクリームぜんざいとか、お汁粉とかの方が失敗がないことはわかっている。もともと私はそれらが大好きなので、満足して帰宅できることは保証されている。それでも食べたい。食べてみたい。ここでダメだったら、金輪際あんみつを食べることは止めよう。甘い響きに惑わされない人生を生きよう。そんな決意を固めて、頼んだメニューはクリーム白玉あんみつ。あんみつにするか、クリームあんみつにするか、白玉あんみつにするか迷って悩んで、選びきれなかったからこれにした。本当は季節のフルーツとか杏も迷ったけど、一回目の訪問はあくまで王道ラインを攻めるのが私の流儀でもある。
 待つこと数分。思ったよりも早く到着。和風の器に盛られた白いソフトクリーム、白玉に求肥に蜜柑、その隙間から覗く半透明の寒天、そして餡。わー! ビジュアルがいい! 見た目がもう完璧じゃん!! と叫びだしたくなる。これですよ、これ。これが見たかったの。名前もいいけど、あんみつってのは見た目も強い。
 恐る恐るスプーンですくって、まずは餡と寒天を食べる。なんていったって、最初はそこからでしょう。つるんと喉元へと滑り込む、甘すぎない餡と蜜。寒天もいつものとは違う。今まで食べていたのは何だったんだ! と、叫びたい。おいしいじゃん。おいしい寒天っていうのは癖もないし、なんともいえないプラスチック感もない。ソフトクリームと寒天の組み合わせもいいし、みつまめと白玉と黒蜜も素晴らしい。これとこれならどうだろう、じゃあこっちはなんて言っているうちに、パクパクスプーンが進んでしまう。組み合わせで無限に味が広がるから、あんみつってやつはきっと最強だったのだ。私が単に知らなかっただけで。
 でも、こんなビジュアル最強な白玉クリームあんみつを食すのなら、幾何学模様の派手なワンピースで臨みたい。レトロ柄の着物はもちろん相性抜群なのはわかってるけれど、ここはあえて大正モダンを気取って、タイトなワンピースで攻めようじゃないか。餡とソフトクリームを口いっぱいに頬張ったうえで、ちゃんと自己主張をする。カラータイツを合わせれば、なお満足度が上がる気がする。和風の落ち着いた店内で、派手だけど馴染むワンピース。この後、上野公園でお散歩することも含めて靴は絶対ペタンコで!
 


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