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#7 「乗り越えない」という治療法

何度も流産を繰り返すと

妊娠をするということは
喜びより恐怖の方が大きくなる


毎日が
朝起きるのが
検診の日が
怖くて仕方がない

怖すぎて過呼吸になるときだってある


超音波のエコー画像を見ることが怖くて
気づくと両手をきつく握っていて
爪の跡がくっきり残っている


「無事心臓が動いていますよ」と言われても
動いていないようにさえ錯覚を起こすほどだ

毎回エコー写真を見るたびに
生きていることに感謝をして
涙を流す


毎晩手術台の夢だってみてしまう


それらすべてが現実になる怖さを知っているからだ

今回、流産を告げられたとき

一番に何を思ったか


涙がでなかった


「またか」


これ以外何も頭に浮かばなかった。


手術の説明をされているときも

もう手順は慣れてしまって覚えているから
主治医の言葉は耳に入ってこない


病院をでたとき
主人に手を握られ
ようやく現実にもどってきた感じがして
声を出しながら泣きわめいた

人目も気にせず
「ごめんね」と泣き続けた


今までは
「仕事を頑張れってことだね」
「今こういう状況だから少し落ち着きなさいってことだね」
「今思っていることを実行しなさいってとだね」



無理やり理由をつけて
乗り越えてきた


しかし、今回はそうではない


理由なんてないのだ

ただ
世の中にはどうにもならないことがあって
それを受け入れるしかないときがある


人間が解決できないことだってあるんだ

そう思うしかなかった


そして、自分の身体を責めるしかなかった
わたしの身体がそうしてしまっているのだから

母子手帳だって
本当はもらいたくない
マタニティマークだって
もらいたくない

捨てる辛さを知っているから


帰宅して
泣きながら
破り捨てて


なかったことにするしかないのだ

ソファに座り
無言のままただ時間が過ぎていった


その中で主人から言われた言葉

「もういいんじゃないかな」

毎回ドキドキハラハラして
手術の度に辛く痛い思いをして

もう十分だよ


子供がいない生活を描いても
いいのではないか


そんな日が来るとは
思っても見なかったが


今回ばかりは
「諦め」の方が大きかったのだ

クリニックに行くのもやめて
子供がいる人生を思い描くのもやめて


新しい人生を歩む


これしか
心の治療法がない


そのためには
無理して立ち直ろうとする必要もないのではないか


毎回流産のたびに自分の事業のことで目標を作り
がむしゃらに働いて
無理やり乗り越えてきたけど


今回は
そんなことしなくてもいいんじゃないか

「乗り越えない」

そんな治療法もある

時間はかかるけど
すべてを
受け入れるのだ

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