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【少女小説】最短1週間でキレイになる方法 第5話

よかったら
第1話から読んでね✨ヽ(*^ω^*)ノ✨




『最短1週間でキレイになる方法』 ⑤


「お礼させてよ! 何でも叶えさせて!」

    ヒユーゴーが綺麗な顔をピンクに染めて、すっごく張り切っている。とっても可愛いんだけど、ヒユーゴーって、ゴミ箱男のヴィクトールでもあるんだよね……なんだかなあ。
    叶えてくれる気はあるんだろうけど、真っ直ぐには信じられないかなあ……。
「……ヴィクトールもそんな事言ってたけど、ストレートに叶えられる感じじゃなかったしなあ?」
「細かくお願いされたら叶えられるよ。細かくお願いしてね」
「うーーん。そうね……」
    細かくお願いしないとダメなのか。それって結構な難問だよね?
    思わず、病院の駐車場の真ん中で腕組みしちゃった。
 曖昧に「女の子らしい外見になれますように」じゃなくて、「23歳の時の滝川クリステルと同じタイプの美人なんだけど、生まれ持った私の輪郭や眉毛の感じは残して、滝川クリステルみたいになるように整形したって周りから思われないようにして、あとずっと若々しくてモチモチツヤツヤ肌荒れシワシミしらずの色白健康肌になって、体形は太過ぎず細すぎず、それが死ぬまで続くんだけど、あくまでも不自然にならないように多少は老化して白髪が50歳頃から出始めて……」とか、それぐらい細かくお願いするって事でしょ?
 ものすごく慎重に考えても、どこかに穴があって、取り返しのつかない大失敗をしそうじゃない?無理。怖すぎ。
 もっとお気楽で楽しいお願いの方がいいかもね。
「……そうだ! ちょっと気になる事があるんだ。この世のどこかにヴィクトール専用の体ってあったりするの? もしあるなら、見てみたいかも!」
「ないよ。作ろう」
「作る? 作るって?」
「今すぐ作ってもいいけど、今回は時間を掛けて作るよ。すごく世話になったから、本人の希望通りに作るんだ」
 また話の展開についていけなくなって、ヒユーゴーのニッコリ笑顔を見ながら、呆然とした。
 ヴィクトールの体はないから……ヴィクトールの希望通りに……作る??
 どういう事???
 人間って、そういう風に体を獲得しないよね?ヒユーゴーもヴィクトールも人間じゃないから……?そう……本当……?
    本当に?
 ヴィクトールの体が、そんな風にあっさり出来ちゃうの?
 信じられない!!
 ……けど、信じたい。
 そう。信じたいの。
 私、ゴミ箱男のゲスい表情に似合う目とか、顔とか、きっとヒユーゴーより大きくて温かい手とかが、この世にあるって信じたい。ヴィクトールはこの世界のどこかに本当にいるんだって信じたいの。
 実際に現れたら、はしゃいでスロットに駆けだすアホの背中をすぐに見送る事になりそうだけど……。まあ、タイミングがあったら、少しだけ頭をナデナデしてみたいかもね。多分、黒髪なんじゃない?
    それだけで、いいや……。
    だって私たちは出会ったばかりだし、なんでもない関係だし、本人から「俺の体を作ってくれ!!  もう2度とスロットしね〜から!!」なんて懇願された訳でもないんだから。私の一方的なお願いだものね。
    それにきっと、お人よしのおばあちゃんみたいで可愛くない女の子の人生は、これぐらいのものだよ。
    やるだけやった後は、弾む背中を見送って、体にだけは気をつけてねって祈る。……笑顔でね。
「…………服、買っておこうか?    産まれて来る時は、流石に裸なんじゃない?」
「裸だよ。それに名前もない。名前を付けてあげて」
「ヴィクトールじゃなくて?」
「人間はこの世にやって来て、それから名前を付けて貰う順番でしょ? ヴィクトールは自分でつけた名前なんだから、体が出来たら名前を付けてあげないと、逆はおかしいよ」
「うーーん……イマイチ、言ってる事は分からないけど……考えとく。ヴィクトールに聞いておいて。新しい名前が欲しいかって。あと、本当に自分だけの体が欲しいかもね?    私がちょっと見たいってだけで、押し付けたくないじゃない?」
「名前も体もずっと欲しがってるよ。じゃあ、服を買いに行く?」
「そうなの?    じゃあ……そうしよっか。丁度、お金もあるし。赤ちゃん用の服になるの? 大人用?」
「大人用。靴も買う?」
「靴? そうね。大人なら、大き目のクロックスでも買っておきますか」
「くろっくすって何? トシミチも履いてた?」
「ううん。田淵さんが履いてたのはスニーカーだった」
「すにーかーなんだ~♡」
 なんとなくかなり気落ちしたけど、ヒユーゴーがちょっとした疑問にも田淵さんを絡めてニコニコで可愛いから、気持ちがほんのり明るくなって来た。
    ヒユーゴーって、田淵さん周りの事だけはすごく記憶してそう。【靴の種類】で古今東西ゲームしても1つも答えられないのに、【トシミチの持ち物】ってお題にした瞬間!スニーカーもクロックスもすぐに答えられそう。
    それって、見た目だけじゃなくて、中身もとっても可愛いって事だよね?いいなあ!
    なんであんな顎ヒゲのおじさんが、こんなに可愛い子から好かれるんだろう?本当にこの世の中って、時々ひどく不可解だよね。
 他にもヒユーゴーは「バスに乗るのは初めて! トシミチも?」とか「お買い物って楽しい? トシミチも?」とか、これまで何をして生きて来たのか全然分からない上に、しっかり田淵さんにまみれた発言ばかりして来て、すごく可愛くて面白くて、つい吹き出しちゃった。
 2人でバスに乗って、病院から駅まで出て、ファッションビルの中をクルクル回って、まだ見た事もないヴィクトールの体に似合いそうな服を探すのも面白いの。
 私の中で、ゴミ箱男はこうだっていうクッキリした像がある訳じゃないのに「この緑のチェックは似合いそう」とか、「このジーンズは色が濃すぎ」とか、したり顔で言うのがすごく面白い!
 ヒユーゴーも話に乗っかって来て「赤より緑のちぇっくだね」とか「濃い色より薄い色のじーんずだね」とか「トシミチも賛成だって!」とか、それらしい事を言うの。私達は一体、ヴィクトールをどんな姿だと思ってるんだろう?
 おかしくて、おかしくて、きっとこれは全部ウソで、ヴィクトールなんて本当はいなくて、ヒユーゴーのお芝居なんだと思ったらすごく淋しくて、服を選んでいるだけなのに泣くほど笑っちゃった。
 
 
 バイトで貯めた女の子らしくなる為のお金をはたいて買った、ヴィクトール用の靴や服。
    ついでに田淵さんへの差し入れのコーヒーゼリーを持たせたヒユーゴーと、田淵さんと、3人で和なファミレスに行って、田淵さんが「独身彼女なし!  ヒユーゴーと付き合いたい!」ってハッキリ言ってくれたからヒユーゴーが号泣して、ずっと泣いているヒユーゴーを田淵さんによ〜くお願いして託して、でも少しだけ田淵さんの顎ヒゲを睨んでから、なんだか不思議なフワフワした気持ちで家まで帰って来た。
 かなり遅くなったけど、誰かは起きてるでしょ、私の話を聞いて!と思っていたのに、当てが外れて珍しく、家の明かりはみんな消えていた。あらら……今日に限って、すでに寝静まってる感じ?
 誰も起こさないようにそっと中に入って、そっと天井収納を開けて、家を出て働いてくれているサチ姉さんの服が入った箱を、そっと引っ張り出した。私でも着られるワンピースがあったりしないかな……?
 まあ、ゴミ箱から出て来たゴミ男のヴィクトールの言葉なんて真に受ける必要は全くないんだけど、明日の授業の後に迎えに来るからスカート履いとけって言われたから……一応……。別に来なくても全く気にしないんだけどね?本当に。何もかも全部夢かも知れないし。
 でも、ほら、折角スカートを着ようかなって気持ちになれた訳だから、このタイミングは逃さない方がいいと思うんだ。うん。そう。こういう機会を逃すと、どんどんスカートから遠のいて行くからね。パンツの方が楽だからとか言っちゃって。つまりこれは自分の為、あくまで自分の為だから!あのゴミ箱男の為なんかじゃないから!それはキッカケにすぎないから。
「……このワンピースなら、なんとか……行ける?」
 サチ姉さんの服の箱から出て来た、白地に黒いクロス模様の入ったタイトなワンピース。
    他の服と違ってヒラヒラしてないし、生地も綿で透けなさそうだし、これなら授業に着て行っても特に変じゃない……よね?一応、カーディガンも羽織った方がいいかな?
 黒いカーディガンの他にストッキングも準備して、何故か息切れしながら枕元に積み上げた。これで明日の準備はバッチリ……よね?そのはず……うん……疲れた……寝よう。すぐに寝よう。
 グッスリ眠る愛の横に敷いてあった私の布団に入って、すぐさま目を閉じた。
    ……………………。
 ……ウソみたいに眠れない……。
    朝まで起きている気しかしないんですけど……?いや、気のせいのはず。体はこんなに疲れてるんだから……。
   何度もクルクル寝返りを打っていたら、外でパラ、パラ、パラン、と音がし始めた。
   予報通り、今夜は雨か……。
 ……今頃ヒユーゴーは、田淵さんと楽しく過ごしているはずだよね。
 もし明日、田淵さんが休日だったら、2人で楽しく過ごし続けて、ヴィクトールは大学まで来られないかも。体が自分1人のものじゃないって、そういう事だよね?不便だよね……。体って、何日くらいで作れるものなのかな?
 なんて。
 一体どこからどこまでが本当なんだろう?
 ヒユーゴーもヴィクトールも全然ウソをついている様子じゃなかったけど、1つの体に2人いるとか、新しい体を作るとか、少しでも信じちゃう私はどうかしてる。もう大学生なのにこんな夢物語みたいな事……。
    バカげた話だって分かっているのに信じたいのは、大人になり切れていないせいなのかな?
 それとも……私……ヴィクトールの事が……?
 ……まあ、考えても仕方ないか……。
 時間が経てば、何がウソで何が真実か、自ずと分かるから。それを待つ事にして、今は少しでも眠れるように楽しい事を考えよう。
 もしヴィクトールに専用の体が出来たら、何て名前がいいかな?
 ヒユーゴーの体に最後まで残って守ってくれたのがヴィクトールだって、ヒユーゴーは言ってたよね。パンドラの箱に最後まで残ったのは希望だから、希望っぽい名前がいいかもね。希望っぽい名前……ホープ君は違うな……それだと野球チームのマスコットっぽいし……。
    自分だけの体を持って、自分の名前を呼んでもらえるアイツはいい笑顔で……笑顔……なんだけど、中身がクズで、またゴミ箱に叩き込まれたりして?
 そんな事をクルクル考えて、寝ても起きる寝ても起きるを繰り返していたら、ちょっと寝坊しちゃった。


 慣れないタイトなワンピースにヒールで授業を受けるのは、どうにも落ち着かなかった。椅子に座った時に足をどうしていたのかが思い出せなくなって、授業中ずっとソワソワ足を動かしていた。
 やっと授業が終わって、ホッとしたような怖いような複雑すぎる気持ちでノロノロダラダラ、リュックにノートをしまっていたら、教室を出てすぐの廊下からザワザワどよめき声がした。
    どうしたんだろう?うちみたいな地味な私大にも、芸能人が来たりするのかな?そんな空気だよね?
    ん?
    芸能人?
 じゃなくて……もしかして、そこの廊下に、フランス人形みたいに綺麗な顔をした金色ロングヘアのお兄さんがいるのかも!?笑うとゲスくて、しゃべるとアホだからガッカリの、綺麗なお人形みたいなゴミ箱男が!
 慌ててリュックに荷物を詰め込んで、肩ひもをひっつかんで、廊下へ飛び出した。
 廊下では、先に教室から出て行った同級生たちが移動せずに溜まっていて、その輪の中心に、昨日見たままのフランス人形みたいなお兄さんが思いっきりいた!!
 よく見るまでもなく、明らかにゴミ箱から出て来た方。
 薄い水色の目がギラギラしてる。スロットとストローと女の子が大好きな、綺麗なのにゲスい目。
 田淵さんが大好きで、そばにいられるだけで嬉しくて泣いちゃうヒユーゴーのピュアな瞳とは全然別物で、笑えて来るぐらい。
 ヴィクトールはすぐ私に気づいた感じでハッとして、廊下で素早く片膝をついて、まるでプロポーズする王子様みたいに私に一輪の花を差し出して来た。何この花?どこかの家のプランターから引っこ抜いて来たんじゃないでしょうね?それか田淵さんに買わせた?
 そういう穿った気持ちで私は一杯だけど、廊下にいる同級生達は、お人形みたいに美しいゴミ箱男の、映画か漫画ぐらいドラマチックな行動に、固唾をのんでいる。
「俺の女神様!!!」
 このダミ声はやっぱり、ゴミ箱から出て来たゴミ男、ヴィクトールの方だ!
 来てくれた事はすごく嬉しいよ?すごくすごく嬉しい。本当にもうすっごくすっごくすっご〜く!!嬉しいんだけど!!
    ……突き刺さるような、周りからの視線が痛い!!!
    みんなの好奇心は本当に分かるけど、マジマジと見ないで!?早くご飯会に移動して下さい!?
 でもヴィクトールの目は、スロットの目押しをしてる?ぐらい真剣で、全然ふざけてないのが痛いくらい伝わって来るから、流石にちょっと怒鳴りづらいよ……。
    仕方なく、恥ずかしすぎでブルブル震える手で、なんとか差し出された花を受け取った。
 受け取ったら、周りからパチ、パチ、とまばらな拍手が起こった。
 大きくはならないけど途絶えない拍手の中、ヴィクトールに力強く手を引かれて、ノロノロと廊下を歩き出した。廊下を曲がったのに、まだ小さく拍手が聞こえて来る。
    ……19年間、生きて来た中で1番恥ずかしい……
    来週からどんな顔で教室に来ればいいの?必修じゃなかったら落としたいくらい、この授業が嫌になった。
「……ツラい……」
「だよなあ!? もっと拍手が欲しかったよなあ!?」
「うっさい!!! 何考えてるの!?」
「君の事♡」
 口から先に生まれて来たようなヴィクトールの肩を、思いっきりひっぱたいたけど、
「うっへへーーい!!!」
    アホをヘラヘラ喜ばせただけだったわ。ダメだわ、こりゃ……。
「……はあ〜あ……。……その辺で座って話す?」
「ウンッ♡」
 大学の敷地内には、あちこちにテーブルと椅子が置いてある。何か買わなくても勝手に座っていいから、便利なんだよね。
 私のよく座る椅子は別の棟にあるから、そこへヴィクトールを連れて行ってあげた。ここは本当にいつも静かなんだ。あまり使われない専用の実習室がある棟の最上階で、自動販売機すらないからね。
 ガラス張りの壁のところへ置かれたいつものベンチに腰掛けて、足元へリュックを置いた。中から水筒を出す私のすぐ隣にヴィクトールが座って、水筒をジーーっと見つめて来た。
「なあに?    喉乾いたの? 下でコーヒーでも買って来ようか?    紙パックのコーヒーだから、ストローもついてるよ?」
「ご飯会行きたいかあ?    女子で行くらしいじゃん」
「えっ!?    また勝手に私の願いを読んだの!?    本当にやめて!!?    もう〜!!」
「ウヘヘヘヘッ♡」
「笑うな!    もうっ!    ……願いってほどじゃないけど、私はこの後の授業も出たいんだ。同級生の女の子グループでね、みんなで同じ授業を取って、同じ時間に帰ろうねって話になったんだけど……私だけ受けたい授業がありすぎて、みんなと全部は合わせられなくて。だからご飯会も今日はいいの。……私、さ、すごくね、この大学へ通えてね、本当にね、本当に……すごく嬉しいんだ。お兄ちゃんお姉ちゃん達が学費を出してくれて……だから……先生の資格を取るだけじゃなくて、色んな勉強をしておきたいって、1人で肩に力が入っちゃってさ……ふふっ。でもさ。こんなに女子グループ内で協調性がないなんて、先が思いやられるよ……学校の先生になっても大丈夫かな?    なんてね。いきなりごめんね。自分語りして」
「君は優しいから全部いい!!」
「今の話に優しさなんてあった?    と言うか、優しいって、そんなにいい事?」
「いい!!!!!」
「そ、そう?    なら……コーヒーを買って来てあげますか!    すっごく優しいでしょ?」
「いや、いい。いらない。それよりな、水筒の中身はいつも君が入れてるのか?」
「ええっ!?    うん……それが何……?」
 一体何に興味があるのか謎すぎるけど、ヴィクトールはまた、スロットの目押しをしてるの?くらい真剣な寄り目になって、水筒を見つめて来た。
    その顔があんまり真剣だからおかしくなって、笑いながら水筒の蓋を開けて、蓋に水を注いで、跪いて捧げてもらった花をそっと生けた。
    蓋から跳ねた水が思ったより冷たかったから、両手で蓋を包んで少し温めよう。これで花も冷たすぎてビックリしないよね?なんて、優しいの一言で、私は優しいって気になりすぎかな?
「ほらっ!    花も、君にありがとうって言ってる。優しくしてくれてありがとう、って!」
「花も?   花の他にも誰か、優しくしてくれてありがとうって言ってるかな?」
「俺だ!!    サンキュー!!    世界で1番優しい女性は君だ!!」
「ふふふっ!    ありがとう。すっごく嬉しいけど、盗んでないでしょうね? この花」
「道で咲いてた」
「道に咲いてたからって、誰かが植えた花だったら、勝手に引っこ抜くと窃盗だからね? 次からはちゃんと覚えておくんだよ?」
「……分かった」
「ちょっと。素直すぎない?    どこか痛かったりしないよね?    どうしたの?」
「俺の体が見たいって、ヒユーゴーに願ってくれたんだよな?」
「まあね」
「けど、ダメだ……。これまでも俺のために願ってくれる人間はいた。けど、ヒユーゴーの体じゃねーと、願いが叶えられねええええ!!!!!」
「元々大して叶えられてないのに、そんな悲壮に言う?」
「俺は、君の家族を健康にして、君の友だちの夢を叶えたいんだ!」
「願いを叶える力より、自分専用の体がある方がよっぽどいいと思わない? ずっと自分でいられるんだよ?    それが一番幸せな事じゃないかな?」
「分かった!!!」
 いきなりヴィクトールがガッとベンチから立ち上がって、潤んだ水色の瞳で真剣に見つめて来た。そ、そんな情熱的な目でジッと凝視しないで欲しいんですけど……!?流石に、茶化せないと言うか、ドキドキ、するから……。
    ドキドキしても……仕方ないよね?
    いくら私が女の子らしくないからって……綺麗な女の子じゃないからって……ここまでの流れもあるし……流石にこれは……!
「……俺は、俺は、君の友だちなのか!!? 友だちだから、俺の夢を叶えてくれるのか!!? 俺の、自分の体が欲しくて、名前をつけて欲しい夢を、叶えてくれるのか!!!    んなあ!?    友だち、友だち、友だちか!!!!?」
「ちょ、ちょっと!?    友だち連呼はやめて!?    廊下に響き渡ってるよ!!?」
「分かった!!     んで、君の名前が知りたいって夢と、コンビ名を決める夢だけ、なんで叶わねーんだ!!?」
「勝手に話をドンドン進めるんじゃない!!    あとお笑いコンビは違うから!    もっと、ほら!    もっと、違う、他の……違うコンビがあったり、なかったり……?」
「ン〜〜!?」
「…………もう! アホだねえ……」
 本当は「君のたった一言でワンピースを着て来て、君が来てくれただけで天にも昇るほど喜ぶ女友だちなんています?」「それを踏まえて、仲良しの男女が組むコンビと言えば!?」「その仲良しコンビを組んでもらえず、名前も教えてもらえない原因と言えば!?  そう、スロットです!」とか言いたいけど、そんな駆け引きをしていいのはすごく綺麗な女の子だけの気がする。
 だから、そっと立ち上がって、花を入れた水筒の蓋を大事にベンチへ置いてから、ヴィクトールの肩をバシーン!!と思いっきり引っぱたいてあげた。
「ギャッ!! ッハハハハ!!! スゲー!! ウケる~~っ!! もう1回♡」
 叩かれたヴィクトールは、またツッコんで欲しそうに金色の頭を近づけて来た。さっきまでの真剣さが完全にかき消えてる!!
 頭は強く叩きたくないから、ぽん、ぽんと軽く何度か手をバウンドさせた。また爆笑すると思ったのに、ヴィクトールは何故か私の手に頭をグリグリ押し付けて来た!!
「何!? 何!? 今度は何!!?」
「もう願いが叶わなくていいのか!?    マジで自分の体になっちまうぞ!?」
「結構です! 自分で叶えますから!」
 自分で願いを叶えるために貯めたお金は、ヴィクトールの服の為に使っちゃった。
 でも、いいんだ。
 バカみたいだけど、いやまさにバカそのものなんだけど、もしもヴィクトールが専用の体を持てるなら……ヴィクトールがこの世のどこかに存在し続けられるなら……それにヴィクトールが本当に会いに来てくれて、嬉しい事がたくさんあったから……恥ずかしかったけど……。
    だから、ヴィクトールは専用の体を持てるんだって、ギリギリまで信じてみる。
    とても信じられない事だけど、信じてどうなるものでもなさそうだけど、どうかしてるって自分でも呆れちゃうけど、それでもヴィクトールの為に願わずにはいられないんだよ。
    女の子らしく綺麗になる為の努力をしないで、会ったばかりのゴミ箱君の事ばかり考えている私は、本当に全然女の子らしくないよね。ただのお人好しで優しい地黒のおばあちゃん。
 分かってる。これが私なんだよ。うん。私だ。いいんだ。さっき自分で言ってたじゃない。
    ずっと自分でいられるんだよ?それが一番幸せな事じゃないかな?って。
    そうだよ。その通り!




~おかしくなって行く田淵家①~




次回!!

~オチは決まっていないので、コメ欄にお願いします!~

ご期待下さい!!


↓続き↓




普段から真面目な少女小説家なのか、怪しくなって来た。




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