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「コトでなくヒトが主役」 〜トラベルジャーナル2023年4月17日号掲載コラム

まいまい京都/東京は、旅行業界専門誌「トラベルジャーナル」でも毎月連載中。今回はトラベルジャーナル2023年4月17日号に掲載されたコラムをnoteにて公開いたします。TRAVEL JOURNAL ONLINE https://www.tjnet.co.jp/

ぶらっとまち歩き着地型プランニングガイド vol.1 (2023/4/17)

コトでなくヒトが主役

まち歩きの人気が高まって久しい。かつては旅行といえば温泉につかり宿でゆっくりと過ごしたり、観光バスで名所旧跡と土産物店を回ったりというのが定番であったが、近年は旅先でまちを歩き、地元の人と交流したいという方向へ人々の興味が向いてきた。

大型バスで施設に乗り付ければよかったハードウエア型「モノの観光」から、ガイドブックを片手に物語をなぞるソフトウエア型「コトの観光」へ。さらにガイドの案内や地元の人との出会いを通じて、まちを体感するヒューマンウエア型「ヒトの観光」へと時代は移った。それは旅のニーズが深化してきたことに他ならない。

まちの最大の魅力はモノやコトではなく、ヒトであり、それこそがまちの面白さだったのだ。まち歩きはそれを顕在化させていく仕組みといえる。まち
の最大の魅力であるヒトの面白さを体験する機会をどのようにつくっていくのか。それこそが私たちの使命だと思っている。

私が主宰するまち歩きツアー「まいまい京都」は11年の創業以来、600人を超える多彩なガイドたちとまち歩きツアーを開催してきた。現在、年間約
1000コースを主催している。その一番の魅力は、愛にあふれるユニークなガイドたちに他ならない。御用庭師に落語家から、考古学者や廃線マニア、
そして地元の主婦まで、各分野のスペシャリストたちが、それぞれ独自の視点でまちを案内している。案内の内容はガイドブックを読むだけでは感じら
れない、ガイド独自の視点こそが重要だ。仕事や趣味や暮らしを通じて、日々考え、体験している話だからこそ面白い。地元への愛、仕事への愛、
ディープな趣味への愛、そこに暮らす人々への愛。あふれ出る愛情がじわっと参加者に伝播する、そんなツアーが最高だ。

知的好奇心旺盛な参加者たちに愛され、まち歩きの輪は次第に大きく広がっていき、18年には「まいまい東京」も本格スタートした。NHKの人気番
組「ブラタモリ」には全面的に企画協力し、これまで10人以上のガイドたちが出演している。10周年を経たいま、税金ではなくすべて民間で運営する稀
有なまち歩きツアーとして、全国各地から視察が絶えることがない。独自のまち歩き文化をつくってきたと自負している。

ヒトの魅力を通じて、まちの新たな楽しみ方に出会ってほしい。まいまい京都のまち歩きは、そのツアー自体が楽しいことはもちろん、その体験を通じ
て、参加した人の視点や見方に変化が生まれ、その人の日常がより豊かに、知的刺激に満ちたものになればと思って開催している。知的刺激があるからこそ人生は面白い。まちへの愛と教養が身に付けば、目の前の世界がもっと
楽しくなる。そう信じているからだ。

以倉敬之(いくら たかゆき)

合同会社まいまい代表。高校中退後、バンドマン、吉本興業の子会社勤務、イベント企画会社経営をへて、2011年「まいまい京都」創業。NHK「ブラタモリ」清水編・御所編・鴨川編に出演。共著に「あたらしい『路上』のつくり方」。京都モダン建築祭実行委員、神戸モダン建築祭実行委員、東京建築祭実行委員。


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