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「建築祭」という名前の理由【まいまい京都のめざすもの⑥】

前回の記事では、まち歩き団体であるまいまい京都/東京が「建築祭」に関わる理由や意義をまとめた。今回は、建築祭がもたらす影響やビジョンについてお伝えしようと思う。

建築祭を通じて、まちと人が動きだす

京都モダン建築祭、神戸モダン建築祭を実施してみて感じたことがある。そのひとつが、建築をひらくと、まちにも人にも変化が起きるということだ。

建築祭に向けて、私たちは貴重な建築を所有・管理している方に、公開のお願いをしに出向く。すると、いろいろな反応がある。ぜひに、とすぐに趣旨に賛同してくださることもあれば、公開をためらう場合もある。その理由はさまざまだ。「めんどう」とか「うちはふつうの建物なんですが」と、こちらの提案に困惑する方も少なくない。

そんな反応の人も、建築祭当日の光景を目の当たりにすると心が動くことがある。「こんなにたくさんの方が来てくれて」と驚いたり、「自分たちの建物にこんな価値があったのか」と建物への見方が変わったり。そして、次の年は「たくさんの人に見ていただくから」と、建築祭前になると庭や植木の手入れをしてくださる方も出てきた。建築にかかわる人たちが、それぞれ建築やまちについてあらためて考えるきっかけにもなるのだ。

よく「まちおこし」などというと、その街に新しいオブジェや建物など、目印になるものを設置したり、イルミネーションなどで街を飾り付けたりすることがある。でも、そうやってプラスアルファを付け加えるのではなく、そのまちにあるものをしっかりと見せていく。ただ、建築をひらく。それだけで、まちの魅力を多くの人に伝え、価値を高めていくこともできるのだ。

「建築祭」という名前の理由

建築公開イベントは、世界中で行われている。世界でも先駆けとなっているのは、ロンドンやシカゴの「オープンハウス」らしい。日本でも「オープンシティ」や「建築ウィーク」「文化財公開」など、さまざまな名前で開催されている。

でも私たちは「建築祭」と名付けた。「祭」というコンセプトがぴったりだと思ったからだ。建築を公開する人たちも、それを見る人たちも、誰もが祭りに参加する人であってほしい。そんな願いを込めている。

誰もが主体の「みんなの祭り」へ

京都には「祇園祭」という1000年以上続く祭りがある。祇園祭は八坂神社の祭事だが、それだけにとどまらない。京都のまちをあげての一大祭りだ。神社だけでなく、それぞれの町が行事を主催することもあるし、各家で秘蔵品を公開する屏風祭がおこなうこともある。山鉾巡行のまえには「試し曳き(曳き初め)」に参加することもできれば、屋台をめぐって食べ歩きもできる。サービス提供者と受益者がはっきりと分かれるのではなく、立場を越えて、全員が祭りの主体として関わっている。

建築祭も、祇園祭のような「祭り」に育ってほしい。誰もが、祭りの主体者になれる「みんなの建築祭」にしていきたい。それが建築文化の民主化につながり、まちの文化を育む土壌になるのだ。


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