見出し画像

タスヤードにしか救えない

数ヶ月に一回ぐらい、タスヤードに行きたくてたまらない蒸気みたいなものが発生することがある。頭上にスコールみたいにわきあがって熱量で支配してくる。
近所じゃなくて遠くもないタスヤード。
電車に乗っていく距離のタスヤード。
タスヤードってあたまでたくさん言い過ぎて、こぼれて実際に言ってしまう。たたたた

代々木から歩くより原宿のエネルギーをほほうと眺めながら東郷神社の裏を通っていくルートが好き、なので、一目散に向かうときはいつも原宿で降りる。
何に並んでいるのかなあ昔から私はこういう先に何があるのかを知れない層、開店に滑り込みたいから一人の時はいつも歩くのが速い。ジムにあるあの歩く機械ぐらい。
もう自分のスピード感は知っている年、きちんと開店したてのタスヤードに到着する。

カウンターの左端が好きだけどどこでもいい。気を遣ってテーブルを案内してくれるのが大げさな感じでなくていつもまた好きになる。
左端におずおずとすわっておとなしく、一息ついて、パスタの説明を聞いて、メニューをおもむろに開くふり、カウンターが最初に埋まってみんな一人でなんだか今日は最高。

お水のコップを置いてもらってこのコップでタスヤードの満足感の2割ぐらいがくる。ごとんとした存在。口につけるとガラスの厚みがぴったりして気持ちよくてただ水を飲むだけでこんなに大満足なコップある。うっとりコップ。タスヤードにこれた。

目の前がキッチンだからもう、水に満足している間に本日のパスタが始まっている、ランチタイムの戦いが始まっている。いい匂いに襲われて本望。手を上げなくてもすぐ気づいてくれる食堂の素晴らしさ心地よさ。

カフェウィンナーかアイリッシュ、とサラダと厚切りトースト。プリンを食べるときはタス茶。今日はウィンナーをえらび、おとなしくわくわくわくわくしていることは悟られすぎないように待ってる。

水コップよりちょっと背が高くちょっと薄いコップにつるつるのクリームがしっかり乗ったウィンナーコーヒー。五分の一はクリーム。
当たり前に生クリームでタスヤードは誠実においしいものを普通に出してくれるからだから好き。
メニューにある一つ一つは賑やかしが一個もなくて、全部それを好きな人が作ったはずと思うのは喫茶店でもないのに細くて小さい先っぽのあの長いスプーンを添えてくれるところ。ウィンナーを頼む人はまずクリームだけをそっと食べるはず合法的にさあどうぞたべなっていってもらえるのは本当に助かる。

濃いコーヒー汁(ウィンナーコーヒーの下って汁って感じがする)が本当にちゃんとコーヒーとしておいしいのも良くて、合法的クリームの後はゆっくりコーヒーを味わいたいからおいしいアイスコーヒーで飲んで、混ぜてクリームコーヒーにして、何回も幸せが来る飲み物それがカフェウィンナー。

トーストがきたらすぐバターをのせて、黄色がとろーんとなって四つ切りの切れ目に入れて準備は整ったのであとは勢い引き裂いて食べる。
「食パンの味わいをより感じられる厚切りにしています」とメニューに書かれているが真実。ちぎると外側はざくざくでもちーっと引くしろいほわほわが出てきて粉の匂いがぷうううんとして粉もうれしいと思う。サラダは最初からシーザードレッシングが混ぜられボウルのどこから食べてもおいしい。水の味とかしないチーズのサラダ。
それで食パンを一切れ食べたら次はクリームをのっけて勝手クリームトーストにして、まだ熱いベーコンを食べて、熱いからコーヒーを飲んで小さいカウンターのスペースでぐるぐるぐるぐるおいしいを連打して脳内の蒸気がぷしゅーと抜けて平和。タスヤードは平和。

お皿に食パンの形に残った湯気はすぐ片付けられてランチタイムの喧噪は原宿でそろそろ。
プリンもゼリーもおいしいしワインも飲める。
お土産のスコーンにはチョコレートがたっぷり入ってて、ごはんで平和を醸し出せるタスヤードがずっとあって欲しい。
救われたい日はタスヤードに行けばいい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?