人との繋がり
ぽっかり空いたその穴が何だか分からない。
友人が私に久しぶりに会ったら眼に精気があったと言っていたらしい。それはいま休職中で療養のためにひたすらヨガに夢中になれるから。ノーストレスで。でも、何なんだろ、この空虚感。
綺麗な淡紅色の桜から新緑に変わって強い風が吹いて、季節が変わる。
私だけ時間に取り残されている感じがする。
集中力もないし何もできないまま、時間ばかりが私の横を通り過ぎていく。このままいなくなっても誰も気づかないのではないかと思うくらいに沢山いる東京のこの場所で、少なくとも繋がっていられる人がいるというのはありがたい事だ。
先日、川沿いの花壇のチューリップが満開になっていた。私は知っていた。冬の間におじいさんが一人で土を変えて球根を植えて、可愛い「チューリップ」と書かれた垣根を作っていたのを。そして密かに楽しみにしていた。
その花が満開になり、ちょうど川沿いを歩きながら帰る途中。14時か15時くらいで暑い日だった。その花壇の近くに新しい土を入れ替えているおじいさんがいた。私は、思わず「あ!チューリップのおじいさん!」と思って急いで通り過ぎ、冷たいお茶を買って戻ってきた。
「あの、今日暑いので水分とったほうがいいですよ」とペットボトルをわたし、話しかけてみた。冬から見ていたことを話し、綺麗に咲いてよかったですねと言い、リタイアしてから趣味でやっていること、園芸が楽しいこと、私の父も同じ趣味であることなどを話し、作業の途中だったので邪魔をしないように「ではまた」とお別れをした。
一人で楽しんでますよ、とおっしゃっていたけど私が楽しみにしていると伝えた時点でもう一人の趣味ではなくなっている。冬から寝ていた花が咲いた時の喜びを植えた人と(勝手に)共有できていることを密かに自慢したい。
田舎ではよくある。知らない人でもまだ挨拶しそうになる癖がある。見たことある人はもう親近者のような感覚になって、話しかけてしまったけど東京でホッとするこういう空間が作れるのはとても素敵なことだと感じた。
また会えるといいな。
繋がりは自分で築くものだと私は思う。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?