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2024.7.4 ミーハー心でのアイヌへの興味に反省~北海道博物館

北海道博物館に行ってきた。
北海道で一番大きな博物館で、アイヌの歴史もわりと学べるとの口コミの通り、かなり勉強になった。
私としては北海道旅行中で一番満喫した場所だった。

本で事前にちょっと勉強していたこともあり、「これが本に書いてあったあれか!」という気持ちで見られる展示が多く、一つ一つが興味深くて楽しかった。
(NHKテキストの『アイヌ神揺集』や新書の『アイヌ学入門』を途中まで読んでいた)


最初は本当に氷河期時代くらいからの歴史が紹介されていて、石器とか土器の展示が多かったのも普段ならそこまで楽しめないところだけど、本でその時代の話が出てきていたからかわりと楽しめた。

北東アジアの民族の分布とか、本州や大陸との交易の部分はさらに楽しかった。ゴールデンカムイでも出てきたトドの毛皮が想像以上にめちゃくちゃでかいということを体感できたのもよかった。
アイヌと倭人の関係の歴史も当時の本や絵でたくさん紹介されていて面白かった。


アイヌ文化のコーナーでは、最初にあった展示が、一見地味だったけどかなり印象に残った。
アイヌの血を引く現代の子供が、実際に自分の親族にインタビューしていくなかでアイヌの歴史を知っていくという、会話を書き起こしたようなものだった。

自分の祖父母の人生、祖父母から聞くその両親や祖父母の人生、親の世代はそんな上の世代を見ながら何を感じて生きてきたか…と聞いていく中で、近代以降のアイヌの歴史を知っていく。
実際にいた人にとって、その時代のアイヌとしての人生がどういうものだったかを想像させる展示だった。
やっぱり歴史の勉強となるとマクロな視点の物が多いから、こういうミクロな視点で歴史を体感できるものもあるとめちゃめちゃいいなと思った。


展示の中で、「現代のアイヌはこういう暮らしをしているわけではありません」「アイヌの中にもいろんな考え方の人がいます」ということが繰り返し強調されていたのも印象的だった。
今アイヌの血を引く人たちは全国に1万人くらい(もっと多い説もある)いるらしいが、その人たちも基本的に日本で一般的にイメージされる暮らしをしていると書いてあった。

言われてみればそりゃそうだろうなと思うけど、わざわざそう書いてあるということは、うんざりするほど「昔のアイヌのイメージ」を期待されてきたということなんだろう。
昔から北海道へ観光しに来る人たちは、アイヌ文化に自分が生きている文化とは違うものとしての憧れと期待を抱きがちだったらしい。
私もゴールデンカムイというエンタメコンテンツで興味を持った本州育ちのミーハーなので耳が痛い。


私は地理的に遠い場所に住んでいたからか、時代が変わった影響もあるのか、アイヌに対する偏見や迫害というものをリアルに体感することなく生きてきたけど、実際はつい数十年前まで「旧土人」として政策として同化を推し進められ、「アイヌ」という呼称自体が差別用語のように感じられることもあったらしい。

アイヌの権利のための運動があったということは知っていたけど、その背景にある、アイヌであることで不本意に目立ったり、嫌な思いをするというリアルな生活まではあまり想像できていなかった。

アイヌであることに強く誇りを持っている人もいれば、あまりそういうことを気にせず普通に生きたいという人もいる。性的マイノリティでもよく言われることだけど、後者の気持ちは見えづらい。
マイノリティは本人が望まなくても目立ってしまったり注目されたりして、「普通に存在」していられない居心地の悪さをさんざん味わわされる。
やっぱり何かしらの属性の人をひとまとまりにくくって、当事者じゃない人が無邪気なミーハー心で興味を持つことは暴力にもなるよなと改めて反省した。


そういう反省も含めて、やっぱり私は周縁の文化圏として迫害された歴史を持つ人たちにとって「迫害した側」の属性の人間であることを痛感したし、彼らを「勉強の対象」として見てしまっていたことが恥ずかしくなった。

マジョリティ側の人間はどういう姿勢でいるべきなんだろう。
同じ失敗を繰り返さないために歴史を学ぶのは、まあやった方がいいだろう。
特定の属性の当事者に対して、その属性故に興味を持って近づこうとするのは本当にやめよう。相手や場所によっては問題ないかもしれないけど、大人があまり無邪気にやっていいことではない。
本当に気を付けないと全然やってしまうなと思った。(実際後日それらしいことをしてしまってめちゃめちゃ反省した)


2階の近代の開拓(農業、鉱業)の歴史展示も興味深くてがっつり見た。
結局3時間くらい博物館で過ごした。満喫しすぎて足がだめになった。
行ってよかった。


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