感性と共存する
17時を過ぎても、外はお昼みたいに明るい。
なんだか驚くほど平和な時間が流れている。
シナモンの香りを漂わせたジンジャーミルクを片手に帰宅する。
シナモンの香りを形容する言葉って結構難しいなぁ、
とぼんやり考えながら、RavelのPiano Concertoの楽譜をめくる。
この2年間くらい、お願いできることは信頼できる人達にできる限りお願いして、負荷が少なく自然にできること、得意なことだけをやれるような環境を、時間をかけてつくってきた。
今まで「これくらいならできるだろう」と思って、あまり何も考えずに引き受けていたことも、長期的に見て自分が余裕を失う一因になりそうなら距離をおく。
それは結構勇気が必要で、悩んだことも多々あったけど、
日々ほっとできる時間と感性が戻ってきた後の方が、何をするにしても結果がついてきやすくなった。
自分が自然にできることに余裕をもって集中できている方が、ずっと多くの人の役に立てる。誰に対しても優しくいられる。
それは、「自分はこういう状態が幸せ」という基準を何度も考えて、
自覚するようになったことと並行しているのかなと思う。
もちろん、思いっきり無理をしたり背伸びをしたりすることも大切な経験で、それがあったからこそ得られたものも沢山ある。
普段、生徒のカリキュラムを作ったり、チャレンジの提案をしたりする中で
このバランスを上手く組み込んでいくことを意識する。
しんどくても頑張る時間も必要。だけど、盲目的にはならないように。
その先にどうなっていたいのか、しっかり考えながら。
応援してくれる人の意見を考慮しながらも、誰かの期待を満たすことや、本来の気持ちとズレていることを優先してしまわないように。
一直線上にモノを見たくなる時も、「今はそうしたいからそうしている」ということに自覚的であれるように。
これまで沢山出会ってきた。真面目で優しくて気を遣う子ほど、自分以外のものを優先するがあまりに、好きなことが分からなくなってしまったり、何に興味があるのか分からなくなってしまったりする。
勉強だけを徹底して訓練して、力任せに突き進ませることもできるけど、
そこで感性を曇らせてしまうことを成長と呼ぶのは、致命的なすり替えが起こっているのではないか。
昨年雑草が抜き取られ、白い石が敷きつめられて、整備された庭。
その石の隙間から緑色の葉っぱが顔を出すようになった。
日光に照らされた白と緑の色彩が視界の隅をちらっとかすめる。
あと20小節ほど。
なかなかたどりつかない過程も楽しいのは、
大事なものの順番を間違えずに続けられているからだと思う。
最後まで読んでいただいてとっても嬉しいです。ありがとうございます♡