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人間観察

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そこかしこですれちがう人たちへ捧げるまでもない物語
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#電車内

わたしたちが生き残るためには

脇に抱えているがご自分の体の幅からだいぶはみ出たバッグ(硬い革もしくは本体がナイロンなのに革のトリミングがなされている率が高く角はかなり鋭利)、ぱんぱんに詰まった背中のリュック(ヨーロッパ1ヶ月の旅でもそんな量の荷物はいらなかった)が、通勤電車内でよくある不可抗力で当たられたり引っ張られたりすると結構な形相できっとなる人々は、空間把握能力がないか空間占有意識が強いかのどちらかである。 そこで問題になってくるのが、どちらが私たちの敵かということだ。 戦闘態勢になって身を潜めて

なぜそうなったのかに考えを巡らせる

そこまで超満員ではない朝の新宿線で、御年80くらいの小さな老夫婦と50代とおぼしきその娘という3人がドアと座席の間くらいに立っていた。 小川町で座席の前のつり革がだいぶ空いたので、私は彼らを越えてつり革エリアに移動した。 神保町で私のななめ前の座席の大学生っぽい女の子が降り、彼女の前に立っていたスーツ姿の男性が網棚から重そうなブリーフケースをおろして座席に座った。と思ったら条件反射のように急に立ち上がった。 たぶん今まで背を向けて立っていたので、座って向きを変えた途端に老夫