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【パラオのゴミ事情 #2】最終処分場

パラオには焼却施設がない。パラオだけでなくミクロネシアの国々はだいたいそうなのだが、焼却施設はとても運用・維持管理コストがかかるため継続的に運転させる必要があり、パラオ(総人口が約18000人)のような小さい国の規模で出るゴミの量では、高い費用をかけて焼却炉を運用させることが難しいのだ。そういう訳で、リサイクルできるもの以外のゴミは埋め立てとなる。

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M-dockと呼ばれる最終処分場を訪れた。ここには人口のほとんどが住んでいるコロール州全土からのゴミが運ばれてきている。

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ゴミの中に煙突のようなものが立っているのがわかるだろうか。この煙突のような装置はゴミの中に空気を送り込んでいて、微生物の働きによりゴミを分解している。この技術は実は日本から入ってきていて「福岡方式」という名前が付けられている。そのおかげか、近くに寄ってもほとんど嫌な匂いがしなかった。

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ちなみにパラオでは国内で使用されているビニール袋は全て分解可能なものとなっている。ただ、そのせいでエコバック持参してビニール袋を減らすという意識があまりないのは良くないよね、という話も現地で耳にしたが。

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ゴミ全体を見ているとやっぱり残るのは家電などの無機物やプラスチック類。人が作ったものなんだなぁと思わされる。このおもちゃは何年経っても分解はされない。

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丘に登って最終処分場を眺めていて、ふと後ろを振り返るときれいな海が広がっていた。同じ世界だとは思えない光景だった。リゾートで訪れる人のどれくらいがこの景色を知っているだろう。たとえ一週間であっても自分がこの国で出したゴミは同じようにここにたどり着く。道中、壊れてしまったサンダルも、捨てても良いと持ってきていた古いタオルも、日本から持ち込んだ分解可能でないビニールでできたお菓子の袋も、これを見た後に捨てて帰ってくることはできなかった。空港で書いたパラオ誓約の「廃棄物は全て持ち帰ります」の本当の意味を私はようやくここで理解したのだった。

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ちなみにこの最終処分場はもうすぐいっぱいになるので今、新しいものを作っている。

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別の日にその工事現場にお邪魔した。ここが新しくできる最終処分場。これができるとパラオ全土からここにゴミを集められるようになる。今年中に完成し、来年から使用される予定だという。ここでも福岡方式が導入されることになっている。

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この最終処分場建設はJICAの無償資金協力で進められていて、工事は日本の会社が請け負っているのだけれど、話を聞くと工事の過程も環境対策について細かく規定があるのだとか。まず環境対策のプランを出さないと工事を始められず、雨が降ったらその泥水をそのまま海に流してはいけなくて、一度プールし上澄みだけ流すという作業。EQPBという環境監視委員会が見にきて、そういうことをきちんとやっていないと工事はストップさせられるのだとか。国の政策はここでも徹底している。

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20年分の廃棄物を埋め立てられる規模ということだけれど、分別が進んできているパラオだからもっと長い期間使えるようになるかもしれない。こちらもまた周りを見渡すと美しい森が広がっていて、きっとここも木がたくさん切られて埋立地になったことを思うと、人が出すゴミの責任というのをやはり感じずにはいられなかった。

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