言葉泥棒

そんなステキな愛のことばを
かけてくれるなんて嬉しいわ
だけどわたしは知っているのよ
そのことばは
あの直木賞作家が書いた本の
145頁に出てくる台詞ね
男が不倫相手を褒めるときに
言ったことばだわ

いくらステキなことばでも
よそからくすねてきたものを
そっくりそのまま使って
それでわたしを
悦ばせているつもりなの
わたしはそんなに
安い女じゃないのよ

こないだね
バイトの男の子に
髪が素麺みたいで
愛らしいですねって
そうやって口説かれたのよ
意味はわからなかったけどね
借りてきたことばよりは
だいぶましだわ

今日でもう最後にしましょう
家で待ってるひとがいるのよね?

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?