イケメンに贈るブルース

 この間、膝を傷めてしまって整形外科にリハビリに通っている。そこのスタッフは年齢層低くて、いわゆるイケメンが多いので困惑してしまう。

 まあそろそろ40になる自分の歳を考えれば当然っちゃ当然なんだけど、仕事でもプライベートでも関わる人はほぼ年下になった。しかもイケメンとくりゃなんだか言葉を交わすだけで申し訳なくなってしまう。

 イケメン理学療法士が膝を触るわけだよ。気持ち悪い話だけどドキドキしないわけに行かないよね。別に好きになっちゃった訳じゃなくて、単につくりが美しいものに触れて興奮してるだけなんだけど。

 そして想像力が逞しいもんだから「ああ、多分このイケメン療法士は、わたしが若干喜んでること察知していて、なんだこのオバサン気持ち悪いなとか思ってるんだろうな」と勝手にテンション急降下しちゃったりしてさ。

 たぶん向こうは仕事でやってるし、いろんな年代の男女を触ってるし、そんなこと全然気にしてないんだろうけど、わたしのこの卑屈さはなんだろう。

 自信が足りないといつも思う。わたしはブスじゃないと思うけど、美しくもない。性格も難ありだし、男性に「選んでもらえる」女ではないと思ってる。

 イケメンを前にすると、こんな自分がこの人と会話していいのか、そばにいていいのだろうかと考える。恥ずかしくなる。こんなんでごめんなさいって。釣り合いがとれていないと感じる。

 だからイケメンが苦手なのかもしれない。目の保養にはたいへん良いけど、遠くから見ているだけでいい。それ以上に深く関わるなんてとんでもない。

 「美しさは公共物」なのかもしれない。

 きれいな女性を、かっこいい男性を見てドキドキする。羨望の眼差しで見る。もちろん、公共物だからと言ってベタベタさわるのは、相手も人間だからダメだけど、その美しさに見とれるくらいは許してください。イケメン諸君。

 わたしはリアルに君らをどうこうしたいと思ってる訳じゃなくて、ただ、君らとちょっとだけ関われたことに喜びを感じていて、それで充分。赤面してても見て見ぬふりしてくれると大変ありがたい。

 わたしも、君らと対峙しても気後れしない程度には自信をつけたいし、そのためにきれいになる努力を怠らないと新年に向けて誓いを立ててみる。

 いや、まず膝を治せよ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?