ユキムシ

午後の陽光に
力なく漂う
雪の群れ
ヤチダモの森を
さまようわたしの
黒いコートに付着する

迷う事などないのだろう
生まれ
脱皮し
子を産み
きっぱり白い
いのちのループ

目的を持たず
からっぽのわたしの
その黒いコートに
雪はまた囚われ
それは弔いの場となる

わたしのじょうぶな体を
永くつづくいのちを
君らにゆずったとしたら
もっとじょうずに
生きることができるでしょうか

君らの脆いからだを
はかないいのちを
わたしにゆずってくれたら
あのように
迷わず飛べるでしょうか

なにも持たない
わたしの腕に
とまった雪は
ふたたび飛び立つことはない

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