カラスの開き
今年の夏は暑かったが、その盛りにとなりの市までランニングをしたときにヘンテコなものを目撃してしまった。
大都市札幌といえども、少し走れば畑が広がっている。あまりの熱気にふらふらしながらも畑のほうに目をやると、カラスのようなものが畑の脇の草むらに落っこちてた。
「いる」とか「置いてある」といった感じではなく、まさに落っこちているという風情である。それは、真っ黒のカラスが羽を大きく開いたような格好で、1ミリも動かない。最初は死骸かと思ったが、それにしては不自然なポーズなので、精巧に出来たレプリカだなんだなあと思った。たぶんカラス除けのために置いてあるのだろう。
畑の作物が荒らされないために置くのは今やカカシではダメってことか。ゴミ置き場にカラスの死骸を模したレプリカを吊してゴミが荒らされるのを防ぐ光景はよく見るが、最近は畑の世界でもカラスのレプリカを使うのか。
感心しながら先に進むと、だいぶ離れた畑にも、同じスタイルのヤツが落っこちてた。ブームなのか。それにしたって変わった格好だ。なぜ羽全開で無造作に落っこちているのか。見つけたらかなりびっくりする大きさだ。そして、細かいところまでよくできている。特にあの羽の感じ。リアルだ。なのでちょっと気持ち悪い。ふだん俊敏に飛び回っているはずのものがピクリとも動かないと、気持ち悪さを感じるのだなあ。
しかし、あれはいったいなんなんだろうなあ・・・と思いながらランニングを続け、やがて暑さのため、そんなことどうでもよくなってしまった。そしてつい数日前まで忘れていたのだ、そんなことは。
数日前のこと、ネットをウロウロしていると見つけたのである、件のカラスと同じ格好をした鳥を。暖かい風の出るPCのファンや家庭用のファンヒーターの前で、羽を広げたまんまでじっとして、羽を乾かしているインコ達。色は違うが、まさにあの時のカラスと同じ格好なのだ。
ということはあのときのカラスも本物だったのか・・・鳥がこうやって羽を乾かすなんて知らなかったなあ。そう思うとおかしさがふつふつと湧いてきた。わたしにとってカラスは天敵なので(何もしてないのに襲われることが多い)羽を広げて身じろぎもしない、あのスキだらけの格好が、なんだか滑稽に思えてしょうがなかったのだ。
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